家族信託を設計する際の主な5つの方向性
先日、子供を保育園に送っていくとプールが設置されていました。
子供たちは喜々とした表情を浮かべて、とても楽しみにしているように見えました。
子どもの好奇心にはパワーをもらい、私も童心に帰って泳ぎたくなりますね。
さて、家族(民事)信託を進めるにあたっては様々なパターンがあります。
そのため、まずはお客様からのヒアリングによって方向性を決めないといけません。
大きく分けると主に下記の5通りあります。
① 認知症対策
② 生前の財産管理対策
③ 遺産分割対策
④ 共有財産対策
⑤ 数次相続対策(受益者連続)
それぞれの特徴を見ていきましょう。
①認知症対策
誰もが認知症に対する不安を抱えています。
家族(民事)信託を元気なうちに設計しておけば、もしも本人が認知症になり判断能力が低下したとしても、受託者が本人に代わって財産管理を行えますので、認知症になってもスムーズな財産管理が行えます。
例えば、子供を受託者にして家族信託をしておけば、親が老人ホーム等に入所して空き家になった実家を子供の判断で処分して親の生活費に充てるというような事が可能です。
②生前の財産管理対策
後継者にそろそろ経営を任せたいが、株価の評価が高くて後継者に自社株式を譲渡できない。
また、後継者が若いのでまだ安心して会社を任せることができない。そのような悩みをお持ちの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
このようなケースに家族(民事)信託は有効であり、株価評価が下がったタイミングを見計らって生前贈与することができますし、引き続き議決権については指図権を父に残して、会社経営の重要な局面にあたっては影響力を保つことができるようになります。
③遺産分割対策
相続が発生した時に問題になるケースの1つとして遺産分割協議が整わない場合が挙げられます。何らかの理由で相続人間で話がまとまらないということですね。
このようなケースにも家族(民事)信託は有効です。
信託を組成した際の信託財産は所有者(委託者)の財産ではなくなるので、委託者が死亡した場合に行う遺産分割協議の対象財産とはならずに、財産帰属者にそのまま承継されることになります。遺産分割協議を経ずに財産の帰属先が決まるというのは遺言と同じような効果があるということなんですね。
④共有財産対策
相続人が複数いる相続では、場合によっては1つの不動産を複数人の相続人が共有することもあります。
では、その内の誰か1人が先に亡くなるとどうなるでしょう?
その子どもたちである甥や姪などに持ち分が相続されることになりますので、共有者の数が増え、また通常相互の関係性が希薄になりますので管理が複雑になります。
そうなると将来の売却や大規模な修繕について全員の意見がまとまらず、手の施しようがなくなってしまう可能性があります。しかも、兄弟姉妹の中に高齢者の方がいて認知症を患うことになると大変困ります。
そこで、持分のある人を受託者に決め、信託契約を結んで、財産管理に支障がないように検討する必要があります。さらに将来全員で売却して金銭を共有者で分配しようということになった場合でも、受託者である子どもとその他の兄弟姉妹で話し合いがまとまれば売却することも可能になります。
⑤数次相続対策(受益者連続)
自分が亡き後は妻、妻亡き後は長男というように、2次相続以降の資産の承継先まで自分で指定することができます。この機能により、自分の希望する順番で何段階にも資産承継者(=「受益者」と言います。)の指定が可能となります。
また、1次相続による資産承継者(高齢の配偶者など)が認知症や障害により、遺言等で次の承継者を指定できない場合に、その人に代わって資産承継者を指定できます(遺言を書いたのと同じ効果を出せます)ので、後々の遺産分割協議による争いの余地を排除できます。
まとめ
家族(民事)信託をうまく使えば様々な対策が非常に柔軟に行えるということがお分かり頂けたのではないでしょうか。
もしかしたら、今まで不可能だと言われたような相続対策が実現出来るかもしれません。
この記事を読まれて、ご自身の悩みが解決できるかもと感じられたら幸いです。
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