わかった!資産承継をオーダーメイドで実現する家族信託

家族信託を中心としての相続対策支援について誰でも分かるように解説します

実家じまいは相続放棄で解決できるの?

みなさんこんにちは、司法書士の西川です。

久々のブログ更新です。長らく休んでました、すみません...。

 

今日は実家じまいについての話題です。

 実家が空き家になってしまうので、どうしようか。

このように考えている人は多いのではないでしょうか。

 

 そんな方がまず考えるのが実家を売却したらいいのではないか、ではないでしょうか。ただそうはいっても、立地がすごくいいとか、建物の築年数が浅いなどのような好条件でない限りなかなか買い手が見つからないのが現状です。

 

そこで、次に考えるのが相続放棄です。

 相続放棄をすれば、実家じまいの問題を解決することができのでは?と考える方もいると思います。

果たしてそうでしょうか。

 そもそも相続放棄をすると実家だけではなく預金などの他の財産も放棄することになるのである、程度預金があるような場合は簡単に相続放棄の選択肢を採用することはできません。

 仮に相続放棄をしたとしても、次のような問題が新たに起こります。

【問題1】あなたが相続放棄をすれば、後順位の方へ相続権が継承されます。

 もし、相続の内容や相続放棄をしたことを知らせなければ後順位の方が迷惑を被り、身内揉めへと発展してしまう可能性があります。

 

【問題2】相続人全員が相続放棄をしても、相続財産管理人を立てない限り、管理責任は問われ続けることになります。

 相続放棄したからあとは知らない、では済みません。台風で屋根が飛び、通行人に怪我をさせてしまった。雑草が生い茂り近隣に害虫で苦情がでた。こんな問題が発生した場合は何らかの対処が必要になってきます。

 

【問題3】相続財産管理人を立てるにも手間と費用がそれなりにかかるります。そもそも処分が困難な実家の場合は、相続財産管理人は見つけづらいです。

 

 このような場合に備えておくには、やはり事前に相続人の間で話をしておくことが必要です。

親が生きているうちに実家をどうするのか、なんて話をするのはあまり気が進まないですが、上記のような3つの問題が生じた後では取り返しがつきません。

しっかりと実家じまいについては家族で話をしておくようにしてください。

安心な相続を実現しましょう。

家族信託における信託財産責任負担債務とは何か?

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 家族信託を組成していると多くのケースで聞かれることがあります。

 それは、「家族信託をしている途中で損害が出た場合、誰がその責任を取るのですか?」という点です。

 例えば、不動産であれば家族信託をすると委託者から受託者に名義が変わりますが、この場合はその責任の所在が分かりづらいですよね。

 このように「受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務」(信託法2条9項)のことを信託財産責任負担債務といいます。

信託財産責任負担債務とは?

 いきなり信託財産責任負担債務といっても分かりづらいですよね。

簡単に説明しますね。

 委託者の有する財産を信託財産に組み入れると、それ以降、当該財産は信託財産として受託者に帰属することになります。

 ただし、それは受託者が信託財産を管理・処分するために形式的に受託者の所有になっているにすぎません。信託財産は受益者のために管理・処分されるものなので、信託財産の経済的な価値は受益者のものなのです。

 つまり、信託をすることで受託者は「信託財産」「(受託者)固有の財産」の2つの財産を持つことになるのですね。

 詳しくは「 家族信託における受託者の信託財産の分別管理の重要性をご覧ください。

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 信託財産は実質的には受益者のために存在する財産なので、受託者が個人的に負っている債務の債権者が、信託財産は受託者に帰属しているからと言って信託財産に属する財産に対して強制執行等をすることはできません。

 そういった受託者の信託とは関係ない債務は受託者の固有財産から弁済をしなければいけません。 

 一方、受託者が信託事務を執行する中で負った信託財産責任負担債務は、信託財産に属する財産をもって弁済を履行する必要があります。しかし、当該債務は同時に受託者の債務でもあるので、受託者は一旦固有財産から弁済をしたのち、信託財産から償還を受けることもできます。

 つまり、信託財産責任負担債務の債権者は、信託財産のみならず受託者固有の財産に対しても債務の履行を求めることができます(信託法21条2項による例外あり。)

まとめ

 受託者が信託とは無関係に負担した個人的な債務は受託者の固有財産から弁済を受けることができます。

 信託財産責任負担債務は信託財産に属する財産から弁済を受けるか若しくは受託者の固有財産から弁済して、信託財産から償還を受けることができます。(信託法21条2項よる例外あり。)

以下関連記事です。

 「もし、財産を預かる受託者が破産した場合とかはどうなるのでしょうか?」という質問について、回答すると共に、今回は分別管理の重要性についても解説しました。

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 「銀行の抵当権が付いたアパート、マンションなんですが、家族信託出来るのでしょうか?」という質問は相談会等でよく受けます。今回は、この様な質問について答えました。

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 「私の財産を受託した後に、マンションの大規模修繕があった場合、受託者が借入してその資金に当てることは出来るのでしょうか?」というご質問を受けたことがあります。この様な事例は不動産で多いのでは無いでしょうか。今回は、信託財産を担保として借入する際の注意点と合わせて解説しました。

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家族信託普及協会ってどんなとこ?

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 TVや雑誌に取り上げられることが増えたので、家族信託は随分普及してきたようですが、どんな制度なのかまだまだ十分に浸透しているとはいえないですよね。

 家族信託は制度設計の自由度が高いので利便性がある反面、それぞれの家族の状況に合わせた適切な設計の難しさがあります。

 そのために間違った提案がなされてしまうこともあるでしょう。また、この制度を悪用して、高齢者や障がい者の財産を搾取しようとする個人・団体が現れる可能性もあります。

 そんなときに、頼りになる一般社団法人家族信託普及協会(https://kazokushintaku.org/)という団体をご存知でしょうか。司法書士、弁護士、行政書士、宅地建物取引士など数多くの方々が会員登録して家族信託の利用者を支援しています。

 主な事業として次のようなものがあります。

1.家族信託の普及活動

 「家族信託制度とはなにか」を広く一般の方々に知っていただくための告知活動を行う。

1.一般向けセミナー

2.パンフレットの作成

3.広告活動

4.寄稿、マスコミへの対応 など

2. 相談を受ける方々に、ノウハウや事例を提供する

利用者から相談を受ける専門家をサポートする。

1.基礎から実務までの、研修会(eラーニング含む)

2.活用事例の情報提供

3.各種専門家の紹介 など

3. 専門家がお客様に提案できるよう、協力体制づくりに取り組む

 実際に家族信託制度を活用するためには、多くの専門職の方々のご理解とご協力が欠かせないのでその連系を強化する活動を行っている。

1.司法書士、税理士、弁護士、公証役場等、法律や税務の専門職の方々

2.銀行、証券、保険等の金融機関ご担当者の方々

3.不動産の活用をご提案されている企業の方々

4.医療、介護関係の方々

4. 正しく運用され、悪用されぬようルール作りや啓発活動を行う

 制度を正しく理解・運用するため、そして悪意のある提案から利用者を守るため活動を行っている。

1.家族信託の提案ルール作り

3.一般の方々や専門の方々への啓発活動

4.各行政機関との連携 など

 安心した老後と円満な相続の実現を目指すという理念を共有できる方を全国から募り家族信託を対策などの一つの選択肢として活用できるためのノウハウの蓄積から環境の整備を図り、財産管理や資産承継に不安や悩みを抱える一般の方々への正しい情報提供と信頼できる専門職への橋渡しを行っています。

 そして、ホームページから全国各地にいる家族信託に精通する専門家を簡単に検索することができます。困った時には地元の専門家にすぐ相談できるようになっているのでお客様にとっては便利ですよね。一度、ホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。

 

以下、関連記事です。

 何故、昨今TV、雑誌等で家族信託制度が注目されているのでしょうか?それは、家族信託制度でしか解決出来ない問題があるからです。今回は、その注目される制度のメリットについて解説しました。

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 上のリンク文を読まれた方は、家族信託制度のメリットの続きをこちらのリンクよりお読み頂けます。合わせてお読みください。家族信託制度のメリットを簡潔に解説しました。

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 「父と家族信託を結ぼうと考えていますが、兄や妹に事前に相談、確認して実行した方が良いですかね?」というご相談について解説しました。

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家族信託の手続きの進め方とは?

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 家族信託がよく利用されるようになってきていますが、先日あるお客様から次のような相談を受けました。

「家族信託を利用したいけど、どのような流れで契約等を進めていくことになるのでしょうか。教えていただけないでしょうか。」

どのような流れで家族信託が組成されるのか分かりづらいですよね。

今回はその流れを簡単に説明しますが、大まかな流れは以下のようになろうかと思います。

 1.信託の内容を決定する(信託の目的、受託者、信託する財産等)

 2.信託契約書を作成する

 3.不動産登記をする

 4.信託口座を開設する

それぞれ詳細を見ていくことにしましょう。

1.信託の内容を決定する(信託の目的、受託者、信託する財産等)

 まずは、何を実現したいから信託するのか?という点です。これが最も重要なところです。目的によっては家族信託以外の制度を利用した方がいいということもありますし、どのような目的を設定するのかは非常に重要です。詳しくは「家族信託の目的の決め方とその注意点とは?」をご覧ください。

 そして、誰に財産を信託するかを決定します。信じて託すわけですから委託者と受託者には信認関係があることが大前提です。身内に信頼できる方がいない場合は家族信託を利用しない方がいいでしょう。詳しくは「家族信託の受託者は誰が資格者として適任か? 」をご覧ください。

 最後に、信託する財産を決めます。不動産、預金等様々な財産がある中で何を信託したらいいのかを判断するのは難しいですよね。信託財産は信託する目的が何なのかが大きく影響を与えることになります。に詳しくは「家族信託で何の財産を信託すべきか」をご覧ください。

2.信託契約書を作成する

1.で検討した内容を基礎として契約書を作成していくことになります。ここで注意が必要なのは、家族信託は長期に及ぶ契約であるため、将来起こる可能性のあることを事前に想定して契約書に盛り込む必要があるということです。この点を想定した契約書を作成しなければ将来、委託者の想いを実現することができないというケースもあります。詳しくは「家族信託契約書を作成する際の注意点とは?」をご覧ください。

3.不動産登記をする

2.で作成した家族信託契約書を元に、信託不動産の所有権移転登記を行います。登記されると、以下のように登記簿に記録され、信託が行われていることが登記記録から分かるようになります。

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 また、同時に信託目録が登記されます。信託目録には信託の内容が記載されますが、どの程度詳しく記載するかについては検討する必要があります。

 さらに、抵当権等の担保の債務引受が必要である場合は、金融機関と債務引受契約を締結し、それについての登記手続きも行う必要があります。

4.信託口座を開設する

 金融機関によっては信託口口座についての認識が進んでいないことも考えられますので、金融機関に対して十分に説明をする必要があります。また、金融機関の方針として信託口口座の開設はしないという場合もあります。自分で説明して信託口口座を作ってもらえたとしても、名義だけ「信託口」とついているだけで実質的には信託口口座として機能しない場合もありますので、注意が必要です。詳しくは「信託口口座が正式に開設されなかった場合の危険性とは?」をご覧ください。

 

以下、関連記事です。

 財産を預かった息子さん(受託者)が、マンションの大規模修繕、節税効果を得る為の賃貸物件の建築をする場合、信託財産を担保にして借り入れすることは出来るのでしょうか?この質問について解説した記事はこちら。

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 先日の相談会で、「銀行の抵当権が設定された不動産は信託出来ますか?」と質問されたので、今回はこちらの質問について解説しました。

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 「以前、家族信託をしたんですが、金銭が少なかったので、追加することは出来ますか?」というご相談です。今回は、信託財産を後から追加出来るのかどうかについて解説しました。

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家族信託契約書を作成する際の注意点とは?

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 私たち専門家は、家族信託の契約書を作成する機会が多いわけですがどのような点に注意して作成しているのでしょうか。

 家族信託の契約書はネット上で多く出回っているようですが、それを元に作成するだけでは不十分で危険す。なぜなら、信託契約書は依頼者や家族の考えやその構成などによって内容が大きく違ってくるからです。また、将来起こりうる様々なことを想定しなければなりません。それらを踏まえて、誰がどのように財産を管理、処分し、そしてその財産を誰が承継するのか。もし、財産を預かった者(受託者)や利益を得る者(受益者)が先に亡くなった場合どのように取り扱うのか等を決定しておく必要があります。

 家族信託がオーダーメイドの財産承継方法であると言われる所以ですね。

 例えば、「受託者の権限としてどこまで行えるのか曖昧」「実質的には受託者のためになってしまっている」「こういう状況が発生すると、受益者が存在しなくなる!」というような契約書では非常に危険で、契約自体の効果が生じない場合もあります。

家族信託は公正証書がおススメ

 また、契約自体は当事者間だけでも成立はしますが、基本的には公正証書で作成することをおススメしています。信託契約書を紛失する恐れ金融機関で口座を開設する際に私文書で作成するより効果的だからです。また、不動産登記をする際にも公正証書で作成しておくと有効です。

 信託契約書の作成業務は家族信託の最も重要な点です。

ご自身で作成する場合でも、専門家に意見を参考にすることを強くおススメします。

 

以下、関連記事です。

 「家族信託を検討しようと考えているけど、どのくらい費用がかかるのかな?」と思われている方は多いのではないでしょうか。家族信託に掛かる費用について解説した記事はこちら。

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 セミナー後に「家族信託を組成する時には、どんな書類が必要なんでしょうか?」と質問が多いので、今回は家族信託組成に当たって必要な書類について解説しました。

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 今回の記事の最後でも記載しましたが、家族信託は当事者間で契約自体は成立しますが、効力は任意後見契約に似ているので、公正証書で作成されることをお勧めしてます。その内容について詳細に解説した記事はこちらです。

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 家族信託の基本的な仕組みと委任契約の違いとは?

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 家族信託は財産を「家族に託す」わけですが、同じような手法として委任契約があります。この2つの制度はどのような違いがあるのでしょうか。

今回はその点について解説いたします。

その前に家族信託の基本的な構造を理解する必要がありますよね。

家族信託の基本的な仕組みは?

たとえば、次にような具体例を挙げて説明することとします。

 「財産を持っているAさんは、自身の老後が心配なので息子であるBに対して自分の財産の一部を託し、Bさんはこの財産を運用して将来Aさんが認知症等になった時に活用して欲しい。」

と依頼したとします。

 このようなケースが最も典型的な家族信託の利用例ですが、この場合の財産を託すAさんを「委託者」財産を預かるBさんを「受託者」信託した財産から利益を受けるAさんを「受益者」といいます。

そして、AさんがBさんに託した財産を「信託財産」といいます。

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信託と委任の違いは?

 さて、以上を踏まえて委任契約と家族信託は何が違うのでしょうか。

 AさんがBさんに対して委任契約に基づいて財産の運用を依頼した場合、Aさんの所有権はBさんに移転することはありません。

 しかし、信託契約に基づいて財産の運用を依頼した場合、Aさんの所有権はBさんに移転します。

 財産を託しただけなので普通は所有権は移転しませんよね。しかし、家族信託の場合は所有権が移転します。なんだか違和感がありますね。ただ、所有権が移転するといっても、Bさんの自身の財産(固有財産)とは区別して管理されます。

 ですので、仮にBさんが自己破産したような場合でもAさんがBさんに預けた財産はBさんの固有財産ではありませんので、債権者に持っていかれることはありません。

 この機能を「倒産隔離機能」といいます。

 このように信託契約と委任契約は明確に違いがあります。

 あまり馴染みのない家族信託という制度ですので、信託に対して不安をお持ちの方もおられると思いますが、まずは専門家にご相談して不安を解消してみてはいかがでしょうか。

 

以下、関連記事です。

 今回の記事で解説した様に、信託契約をした場合は名義人が受託者になりますよね。では、固定資産税はどなたに課税される仕組みになっているのでしょうか?こちらの記事も合わせてお読み頂けるとご理解が深まると思います。 

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 外国の方は日本での船舶所有を法律で禁止されています。では、その船舶を信託して、外国人が受益者になると法律上どの様になるのでしょうか?今回は、この様な事例について解説しました。

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 不動産を信託をすると、法務局に登記をしなければなりませんよね。その際に、信託目的等も記載するので、お子さんが障害があることも信託目録に載ってしまうこととなってしまいます。今回は、この当初受益者を秘匿する方法が無いかというご相談について解説しました。 

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銀行の抵当権の付いた不動産でも信託できるのか?

 

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銀行の抵当権の付いた不動産でも信託できるのか?

「銀行の抵当権が設定された不動産を家族信託することはできるのでしょうか」

そういったご質問を受けることがあります。

銀行等の抵当権の付いた不動産を信託することは可能ですが一定の条件があります。

それは、担保を設定している銀行等の協力が必要となるということです。

 不動産を信託した場合は所有権が移転することになるため、銀行等の同意が得られれば信託することができます。多くの場合、名義を取得する者への債務引受を条件とするしょうけれども、そのような条件を無しに信託できる場合もあります。

 家族信託により銀行等に法的なリスクは生じるのか?

 例えば、抵当権の付いた不動産を信託した場合、抵当権は消えることなく信託不動産についていきます。「信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利」(信託法第21条1項2号)として当然に信託財産で負担することになります。

 そもそも随伴性で抵当権の「登記」が先にされていますから、信託で名義変更しても当然抵当権が優先しますので、信託によって所有権移転しようがしまいが、抵当権者である銀行等に大きな影響は無いと言えます

一方で、抵当権で担保される「債務」自体は、当然には「信託財産としての受託者」で負担されません。

「抵当権は信託財産に付いてくるので、その抵当権で担保される債務も「信託財産としての受託者」で負担するはず。」と、思われるかもしれませんが当然には債務は「信託財産」では負担されません。したがって、何もしなければ、ローン債務者は「委託者」のまま、収益金管理口座名義は「信託財産としての受託者」になりますので、これは銀行等にとってリスクになるかもしれません。

 よって、抵当権の付いた不動産を信託する場合、銀行等のリスクを回避するためには、信託契約の際に、信託後のローン「債務者」について、どうするかの「工夫」が必要になるかもしれませんね。

 いずれにしても、担保権付不動産を信託する際には、銀行等に生じうるリスクをしっかりと踏まえたうえで、当該リスクへの対応がきちんとなされた提案を行うことが大切ですね。

 

以下、関連記事です。

 高齢化の影響もあり、ご高齢のアパートオーナーは全国的に増えてきてますね。高齢となりアパートを管理することが難しくなってきた場合はどの様な対策が打てるのかについて解説した記事はこちらです。

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 受託者(財産管理を任された方)がマンションの大規模修繕や節税目的の賃貸物件建設をする場合、信託財産が担保となります。この様な場合の注意点とは何でしょうか?こちらの事例について解説した記事です。

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 「今、個人で所有しているアパートと、親から信託で任されたアパートの損益通算って出来るのですか?」というご質問です。不動産や株式をされている方には馴染み深い言葉ですね。今回は家族信託の損益通算について解説しました。

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詐害信託(さがいしんたく)とはどのような信託なのか?

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詐害信託(さがいしんたく)とは? 

 家族信託を組成する上で、目的設定が重要であるということを以前ブログで記載しましたが、委託者が債権者を害することを目的として信託をする方もいます。これを詐害信託(さがいしんたく)といいます。

 例えば、委託者がその所有する1000万円を全て信託財産として信託を設定するとします。これにより委託者の手元の財産は減少します。もし委託者に債権者がいた場合は、この信託によって1000万円をアテにすることができなくなりますよね。そうなると委託者に対する債権者の利益を害する恐れがあります。

 委託者の財産を家族信託すると、この信託財産は委託者の固有の財産とは離脱して、受託者が当該信託財産を管理・処分することになりますが、最終的にこの信託財産は残余財産受益者や権利帰属者に給付されるため、信託は委託者の財産を減少させることになります。

 このように委託者が債権者を害することを知りながら信託を設定した場合には、受託者がそれを知っているかいないかに関わらず債権者は受託者を被告として信託の取り消しを裁判所に請求することができます。

 但し、受益者が現に存する場合において、その受益者の全部又は一部が、受益者としての指定を受けたことを知った時又は受益権を譲り受けた時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは当該取り消しはできません。

 善意の受益者については保護しようということですね。

 受益者に対する詐害行為取消請求

信託財産の取消(信託法第11条4項)

 詐害信託の場合、悪意の受益者が受託者から信託財産に属する財産の給付を受けたときは、債権者は、受益者を被告として、詐害行為の取消しを裁判所に請求することができます。

受益権の譲渡請求(信託法第11条5項)

 詐害信託がされたことについて一部の受益者が善意の場合、信託の取り消しが認められません。それでは他の悪意の受益者まで信託の利益を享受してしまいます。

 そこで、委託者の債権者は悪意の受益者に対して受益権を委託者に譲渡するように請求することができます。

 これは善意の受益者が存在する場合には取消権を行使できないとしても、詐害信託について悪意の受益者に対しては受益権の譲渡請求をできるようにしたものです。

 

以下、関連記事です。

 外国籍の方が日本の船舶を所有することは禁止されています。この法規制を逃れる為に、信託を活用して、外国人が受益者となり、実質的に船舶を保有する権利はどの様に規定されているのでしょうか?今回は、脱法信託、訴訟信託について解説しました。

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 相談に来られている方に「家族信託をどんな目的で活用したいのでしょうか?」と聞くと、「制度がいいと思ったんで…。」とお答えになるが多いですね。今回は、どんな目的で活用するかのご理解を深めて頂く為に、家族信託はどんな目的の際に活用した方が良いのか?また、注意点についてまとめた記事はこちらです。

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 「子どもに財産を任せようと思っているんだけど、本当に子どもに任せてもいいのかなぁ。」と不安を抱かれている方は多いのではないでしょうか。そんな不安を抱える方に一読頂きたい記事です。

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家族信託⇨遺言の順番で内容が重複した場合の取り扱いは?

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 家族信託を利用する際に相談を受けたものを解説します。

以前、「遺言⇨家族信託の順番で内容が重複した場合の取り扱いは?」という記事を書きました。今回は、「家族信託を先に組成したあとに遺言書を書いた場合はどのような取り扱いになるのか。」という点について記載しました。

 家族信託⇨遺言の順番で内容が重複した場合の取り扱いは?

 信託の組成を契約によって行うのかそれとも遺言によって行うのかによって結論が違いますので解説いたします。

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遺言による家族信託遺言書作成の場合

 先に書いた遺言による信託と後から書いた遺言書の両方がある場合、遺言書が複数あるということになります。このような場合は、基本的に後から書いた遺言書が有効になりますので、先に書いた遺言による信託は無効です。死期に近い時に書いた遺言書の方がより本人の意思に沿っているだろうという考えですね。ただし、先に記載した遺言による信託も後から書いた遺言の内容と抵触しない場合は効力が認められます。

例えば、先に書いた『自宅は長女へ信託する。と書かれた遺言による家族信託があったとします。同時に、後に書いた『自宅以外は長男へ相続する。と書かれた遺言書も見つかったとします。

 この場合は内容が重複していませんので、先に書いた遺言による家族信託も有効となります。

契約による家族信託遺言書の作成の場合

 契約による信託を行った場合、それは遺言による信託と違って即座に契約が有効になります。よって、その時点で委託者の固有財産から離れて信託財産となりますので、仮に後から書いた遺言内容と矛盾があったとしても先に書いた契約による信託が有効になります。

まとめ

 家族信託が行われた後に内容が重複する遺言が行われた場合に、先に行われた信託が遺言による信託なのか、それとも契約による信託なのかによって結論が違ってくることになりますので注意が必要です。

 このケースと比較になるのですが、遺言をしたあとに家族信託をした場合はどうなるのでしょうか。

 以下の関連記事に記載していますのでご覧ください。

 

 財産を安心して承継するにあたり家族信託、遺言、贈与など様々な方法を検討することになりますが、その際多くの方法を併用することもあります。

 法的にどのような効果を生むのかをしっかりと理解しておかないといけないですね。

 

以下、関連記事です。

 今回解説した内容の逆で、遺言書を記載した後に家族信託を組成した場合です。こちらの場合は、どの様になるのか解説した記事はこちら。合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 「ウチの家族は財産が少ないから争族なんて起こらないよ。」と思ってらっしゃる方こそお読み頂きたい記事です。まず、相続が争族化するパターンを把握して、いざという時に備えておきましょう。

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 「父から相続が発生した時に、遺言書に家を相続させると書かれてましたが、私は別の所に家を持っているので、遺言書内容とは違いますが家を売ることは出来るのでしょうか?」という相談です。この様に相続と異なる遺産分割の話は多いので、記事で解説しました。

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家族信託で何の財産を信託すべきか

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 さて、家族信託を開始するにあたってよく聞かれるのが、様々な財産がある中で何を信託したらいいのでしょうか?という質問です。

 家族信託は遺言書のように「全ての財産を信託する」ということができません。そのため何の財産を信託したらいいのか、というのを考える必要があります。

では、どのような財産を信託財産としたらいいのでしょうか。

家族信託で何の財産を信託すべきなのか

 何の財産を信託したらいいのかを考えるポイントは、何の為に託したいのか?(目的)を考えるところからスタートすることになります。この点については、専門家の意見を参考にすることも大事ですが、やはり目的に沿うにはどの財産を信託し、誰に託すのが適切なのかという委託者ご自身の考えが大きな部分を占めることになります。

何の為に託したいのか?

 家族信託で何を信託財産とするのかを判断する上で重要なのが、「何の為に託すのか」つまり「目的」です。

不動産の積極的な利活用を主たる目的とする信託

 不動産の積極的な利活用を主たる目的とする信託であれば、利活用する可能性のある不動産やそれに相応な金銭を信託することになります。

 

委託者の方やその配偶者の安心した生活を目的とする信託

 委託者の方やその配偶者の安心した生活を目的とするのであれば、居住している不動産を信託財産とすることになります。

 

一定の家産を末代まで承継することを目的とする信託

 母屋などの先代から代々引継がれてきている財産を末代に渡って承継することを目的とする信託であればそれらの財産を信託財産とすることになります。

 

 上記の例は、ほんの一例です。いずれにせよ信託の目的に沿った財産を選択することが必要です。なお、不動産を信託する場合、固定資産税などの固定費が必要となりますので一定の金銭も信託することになります。その際の金額については、不動産の固定資産税額や、築年数などに応じて修繕費を見込むなどのによって定めなければなりません。

 

以下、関連記事です。

 家族信託の目的の重要性はお分かり頂けたと思いますが、「家族信託を組成するにあたって注意点はないの?」というご質問も多いので、こちらの記事で解説しました。より深い信託目的についても補足しましたので、合わせてお読み頂けるとご理解が深まると思います。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 家族信託は主に5つのパターンがあります。パターンを把握することにより、よりご自身の家庭に合っている制度なのか、合っていない制度なのかご判断頂き易くする記事を記載したので、「私の家庭は信託のパターンに当てはまるのかな?」と疑問に思われる方は合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 「家族信託の制度が良いのは理解出来たけど、どのくらいかかるの?」と質問されることがあります。今回は、よく家族信託と比較される成年後見制度との費用を比較しました。家族信託に掛かる費用を知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

家族信託を利用するにあたっての課題とは?

 

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 様々な場面で家族信託が効果的であるということが浸透してきたように感じます。しかし、実務を行っていく中で、いくつかの課題があることが分かってきました。今回はその課題について記載しようと思います。

(1)家族信託には身上監護権がない(成年後見制度との比較)

 家族信託は成年後見制度と違って身上監護権がありません。そもそも制度趣旨が違うので当然ではあります。なので、依頼者本人の財産の積極的な管理を主な目的とするのではなく、依頼者の身上監護を目的とするのであれば、成年後見(任意後見)制度を利用することになります。ただし、家族信託も施設に入所した本人の財産を管理することで、間接的に身上監護を実現することは可能です。

(2)受託者の決定に際して家族の同意が得られない可能性

 家族信託を進めるにあたって、受託者を誰にするのかを決定する過程で頭を悩ますことが多くあります。基本的に委託者となるべき方に最も近い親族を受託者とすることが多いですが、家族信託では委託者と受託者の間の二者で契約を締結することになります。そうすると、他の相続人からすると受託者が財産の管理から承継までを適正に行うのかが不透明で、不安だと考える親族も多くいます。このような状況から家族の同意を得られず、受託者の選定に苦慮するケースは多くありあます。

(3)信託しない財産の取り扱いについて

 家族信託は別記事でも述べましたが、「委託者全ての財産を信託する」というような包括的に利用することはできずに、信託する財産を特定する必要があります。そうなると信託しない財産をどのようにするか、という点で委託者と要相談するケースが多くあります。私はその際、家族信託が財産の承継方法についてを主眼においている場合は合わせて遺言書の作成も提案するようにしています。

 

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家族信託での必要書類とは?

 

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 家族信託を組成する際、どのような書類が必要になるのかを質問を受けることがあります。

今回はその点について記載します。

家族信託に必要になる書類とは

 一般的に必要とされるものとして、次のようなものです。ただし、各事案に応じて追加の資料が必要となるケースもあります。詳しくは相談される専門家の方に直接ご確認いただくのが一番

かと思います。

  • 委託者と受託者の実印及び印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)

  • 委託者と受託者の運転免許証等の本人確認資料
  • 信託に関わる方の戸籍謄本・住民票
  • 不動産の固定資産評価証明書、名寄帳
  • 不動産の登記識別情報(登記済権利証)
委託者と受託者の実印及び印鑑証明書 

 公証役場と法務局(不動産を信託する場合)への提出用として委託者と受託者の印鑑証明書が必要です。これは3ヵ月以内のものが必要となります。また、不動産の管轄が複数にまたがっている場合は管轄ごとに必要となりますので、印鑑証明書が何通必要なのかについては専門家に相談することよいでしょう。

委託者と受託者の運転免許証等の本人確認資料 

 委託者と受託者の本人確認用として運転免許証を準備してください。これは法務局に登記を申請する司法書士に必要になります。本人確認の書類としては、運転免許証やパスポートなど顔写真のあるものの他、後期高齢者医療保険者証や介護保険者証など顔写真のないものもあります。本人確認資料としてどのようなものが必要なのかは依頼する司法書士に直接確認いただいた方がいいでしょう。 

戸籍謄本・住民票

 戸籍謄本や住民票は信託契約書に氏名、住所、生年月日、続柄等を正確に記載するために取得します。注意が必要なのが、委託者と受託者だけでなく、受益者(第2受益者以降を含む)、帰属権利者、受益者代理人、信託監督人など家族信託に関与する方のものも必要です。また、場合によって、わたしは委託者の推定相続人を調査するために追加で戸籍の取得を依頼することもあります。

不動産の固定資産証明書若しくは名寄帳

 信託する財産の中に不動産がある場合は固定資産評価証明書若しくは名寄帳の準備が必要です。物件の正確な情報を把握するためです。なお、わたしは信託を組成する際、実際に信託する物件だけではなくその他の財産についても簡易に調査する場合があります。委託者の想いを聞き進めていくと、「こちらの物件も信託した方がいいのではないですか?」など、さらに良い提案ができる可能性がある場合があるからです。

登記識別情報(登記済権利証)

 不動産の登記済証や登記識別情報は所有権移転登記の際に使用しますが、紛失している場合は登記の費用が高くなるケースが多いです。

 

 以上が一般的に必要になる資料ですが、冒頭にも記載してます通り、追加で資料が必要になるケースも多々あります。相談される専門家の方に詳細をお聞きするといいかと思います。

 

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子供(受託者)が信託財産を目的以外で使用する可能性があり不安をお持ちの方へ

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  ご自身の認知症などの対策のために家族信託を利用して財産を子どもを受託者として信託しようとする方が増えているようです。同時に、受託者である子どもが信託された財産を使い込んでしまうことを心配している方も増えているようですね。

信じて託せないのであれば家族信託はすべきではない

 結論から申しますと、家族信託は家族を信じて財産を託すものですので子供(受託者)が信頼できないのであれば、そもそも家族信託をしない方がいいのかもしれません。

 消極的な財産管理を行う成年後見制度と違って、家族信託は積極的な財産管理を行います。成年後見のような消極的な財産管理であればどの家庭においても全く同じとは言いませんが、同様な財産管理の方法になります。

 しかし、積極的な財産管理を行う家族信託は各家庭によって財産管理の方法が異なり、受託者の裁量がより大きくなるのは事実かと思います。

 裁量が大きくなるイコール不正等が生じる可能性が高まるわけですが、それがもし心配なのであれば安心して財産を預ける、いわゆる「信じて託す」ことができないわけですので、私はそもそも信託はしない方がいいと考えます。

 受託者の仕事をチェックする機関とは

 成年後見制度であれば、成年後見人の監督を家庭裁判所がします。また、成年後見監督人という制度もあり、監督の機関が整っているといえるでしょう。

 一方で、家族信託では基本的には、裁判所などの関与はなく監督する機関が成年後見制度と比べて整っているとは言えないのが現状です。

 ただし、受益者代理人や信託監督人など受託者をチェックする機関を設けることはできます。

 しかし、受益者代理人や信託監督人は受託者が不正をする恐れがあるから設置するものではなく、受託者が適正な仕事を行うことを前提として、それをフォローするという立ち位置であってしかるべきです。

 根本には受託者への信頼があるべきで、やはり安心して財産を預けられないというのであれば家族信託を行うことは適切ではありません。

 

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家族信託と遺言信託の違いとは?

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遺言信託とは何?

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 信託銀行が提供している「遺言信託」は、信託法上の「信託」とは関係ありません。では、一体何なのかと言うと、信託銀行が遺言書を作るサポートを行い、その後遺言書を保管して、遺言の効力が発生したら遺言を執行をするという一連のサービスを総称して「遺言信託」と呼ぶのです。

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 遺言信託は信託銀行の手厚いサポートを受けて遺言を作成、保管、執行を行ってもらえますので、大変便利な制度です。ただし、原則として公正証書遺言のみ作成、保管を受け付けているため、ご自身が書かれた自筆証書遺言など公正証書遺言以外の形式の遺言は遺言信託することはできないようです。

 結局のところ遺言信託は民法上の遺言ですから、当然遺言者が亡くなった以降に効力が発生することになります。つまり、生前のことは遺言信託ではカバーできません。

家族信託とは何か?

 一方、家族信託は契約をしたときから効力を発生させられますので生前に、仮に本人が認知症になって判断能力が無くなった場合でも生前の財産管理や資産運用を行うことができます。

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 効果を本人の生前に生じさせたいのか(家族信託)、それとも死後に生じさせたいのか(遺言信託)、制度をしっかり理解して利用をしましょう。

 

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 今回の記事で解説した遺言信託と家族信託の違いと同じように、家族信託と商事信託の違いについてもよく質問を受けますので、商事信託についても解説しました。今回の記事と合わせてお読み頂けると理解が深まると思います。

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 セミナー後に多い質問は「家族信託って活用できそうなことは分かったんだけど、実際にいくらくらいかかるの?」です。今回は、気になる家族信託にかかる費用について解説しました。

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 「家族信託が節税になるの?」というご質問もよく頂きますので解説しました。節税を考えられている方も多いと思いますので、家族信託組成前に知っておいて頂けると幸いです。

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