家族信託を利用した高齢のアパートオーナーの管理方法とは?
みなさんこんにちは、ビールが美味しい季節まであと少しです。
わたしはダイエット中なので我慢するのが辛いのですが。
さて、先日事務所に夫婦でお越しになられた方からのご相談です。
相談者・長女(55歳)・長男(52歳)
「83歳になる母は、アパートの賃貸管理業を行っています。最近もの忘れがひどくなってきていて、今後、アパートへの入居希望者が出た場合や退去者が出た場合の契約手続き、大規模修繕、相続などの問題が心配です。いずれは管理を私たち(長女・長男)がしていかなければなりませんが、このまま母の認知症が進行すると、思い通りに管理できない可能性があると聞きました。アパート⓵は長男が管理し、アパート⓶は長女が管理する方法を取りたいのですが、何かよい方策はありませんか。」
このご相談を要約しますと、
① 母親が認知症になった場合でも長男と長女が柔軟にアパートなどの財産を管理・修繕等できるようにしておきたい
② 83歳になる母が安心して生活できるようにしておきたい
③ 母親が亡くなった後の財産の承継方法を生前に指定しておきたい
ということです。
アパートの承継者別に家族信託を利用した活用事例
原則、母(83歳)がアパートなどの賃貸物件を管理していて認知症になった場合、成年後見人等の選任が必要になります。
その場合、長男と長女にとって相続税対策など将来を見据えたアパートの建て替え、大規模修繕、売却等ができなくなり、このままでは家族の想いを実現することが困難になります。
※ なぜ成年後見人だと建て替え、大規模修繕、売却等が出来ないの?詳しくはこちら
そこで、わたしはご相談を受けた際に、家族信託を利用したスキームを提案いたしました。
この家族信託のスキームを図に示すと次のようになりますが、ここでのポイントは、母親自身の安定した生活を確保しつつ、長男と長女それぞれに対してアパートを引き渡し、適切に管理をしてもらう。そして母親が亡くなった時は、そのアパートはそれぞれに引き継ぐことができるという点です。
この家族信託のスキームを図に示すと次のようになります。
今回の場合、アパート⓵については長男が、アパート⓶については長女が管理し、そして最終的にはそれぞれが管理するアパートを承継するというケースとなります。
このような場合、信託の契約内容が複雑化しないよう、長男と長女それぞれ2つの信託契約を提案する方が良いでしょう。
今回は例にならって2つの信託契約を提案しました。
1.長男を受託者とするケース
2.長女を受託者とするケース
家族信託を利用したスキームで実現できること
上記の図のような信託スキームを形成することで、
① 母親が認知症になった場合でも長男と長女が柔軟にアパートなどの財産を管理・ 修繕等することができます。
② 母親が認知症になった場合でも長男、長女が管理するアパートからの収益等で母親の安心した生活を確保することができます。
③ 母親が亡くなったあとに残ったアパートやその他の財産は、長男と長女が引継ぎ、相続のような効果を生むことができます。
以上のようなスキームを提案して、信託契約書を作成することで、これまでは実現が難しかった想いを実現することができました。
1つの家族間でも複数の信託契約書を作成するなど、信託契約には自由な発想を持つことで様々な事態に対応することができます。
悩みをお抱えの方は一度検討してみてはいかがでしょうか。
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