家族信託を利用して認知症の配偶者が安心して生活する方法とは?
みなさんこんにちは、先週末は一日中雨でしたね。
久々に家の中で読書をしましたが、そんな週末もいいものですね。
さて、先日事務所にお越しになられた82歳の方から次のようなご相談がありました。
相談者・父(82歳)
「80歳の妻は認知症を発症して、今は施設に入所しています。わたしも、82歳になりますが今は元気で、自宅で生活してます。ただ、最近もの忘れがひどくなってきていて、自分と妻の将来が心配になってきました。財産の管理を柔軟にできるよう娘に任せて、もしわたしが亡くなった場合でも残った妻が安心して生活できるようにしてあげておきたい。そして、私たち夫婦が亡くなったあとは、面倒見てもらった長女に財産を残してあげたい。そのような想いは実現できるのでしょうか。」
とのことでした。このご相談を要約しますと、
- 82歳であるご自身が亡くなったあとは、80歳になる妻が安心して生活できるようにしてあげたい。
- 娘が柔軟に財産を管理できるようにしてあげたい。
- 父(82歳)と妻(80歳)が亡くなったあとは財産を娘に承継させたい。
ということですね。
家族信託を利用した認知症の配偶者への財産の引継ぎについて
本来、父(82歳)が亡くなると相続が開始して、その時点で全ての財産は母(80歳)のためだけに使うことはできず、遺産分割協議が必要になります。
今回の場合は母(80歳)と長女(58歳)が遺産分割協議をすることになりますが、母(80歳)は認知症であるため、遺産分割をするにしても成年後見人等の選任が必要になり、このままでは父の想いを実現することが困難です。
そこで、わたしはご相談を受けた際に、家族信託を利用した方法を提案いたしました。
この家族信託の方法を図に示すと次のようになりますが、ここでのポイントは、相談者本人のみならず、自身が亡くなった後、妻の生活の安定と確保を実現できるという点と、遺産分割によらずに財産を娘に承継できるという点です。
家族信託を利用したスキームで実現できること
① 信託した預金については、父の施設入所費用など日常生活のための生活費として長女(受託者)が管理して、必要なときに父親のために使用することができます。
② 父親が認知症になった場合や亡くなったときは、その財産を母親のために長女(受託者)が管理して、必要なときに母親のために使用することができます。
③ 母親が亡くなったあとに残った財産は、長女が引継ぎ、相続のような効果を生むことができます。遺産分割協議などの手続きは不要です。
以上のようなスキームを提案して、信託契約書を作成することで、これまでは実現が難しかった想いを実現することができました。
これまでの民法に縛られた財産承継では実現できないことも民事信託を利用することによって実現することが可能であるということが分かっていただけたでしょうか。
長年抱えてらっしゃるお悩み等ございましたら、家族信託で思いを叶えることが出来る方もいらっしゃいますので、皆様の参考となれば幸いです。
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