わかった!資産承継をオーダーメイドで実現する家族信託

家族信託を中心としての相続対策支援について誰でも分かるように解説します

家族信託の損益通算(そんえきつうさん)の禁止ってどういうこと?

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 さて、以前、ある会社の社長さんから信託に関するご相談を受けました。

 「家族信託を利用した財産(アパート①)と個人で保有している財産(アパート②)の不動産所得の損益通算(そんえきつうさん)については可能なのでしょうか。」

という内容でした。

ということで、今回は信託財産と個人財産についての損益通算について解説します。

ケース1:信託財産と受託者の個人財産の損益通算は可能か?

 結論から申しますと、下記の図の通り信託財産個人財産利益と損失の両方を合算することはできませんし、また信託財産から生じた損失を翌年に繰り越すこともできません。(措法41の4の2①、措令26の6の2④)


 なんだか、少し分かりづらいですよね。信託財産と個人財産の利益と損失の両方を合算することはできず、また信託財産から生じた損失を翌年に繰り越すこともできないとはいったいどういうことなのでしょうか。


 例えば、ある依頼者が2つのアパートA・Bを持っていたとしましょう。

 そのうちのアパートAを家族信託を利用して信託財産とし、もう1つのアパートBについては信託を利用せずこれまで通り自身で管理することとしたケースを想定します。

 

 ある年、個人で管理するアパートBを大規模修繕したため、マイナス200万円の赤字が出てしまいました。
 信託を利用しているアパートAについては順調に収益を伸ばし400万円の黒字でした。

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 このような場合に、プラス400万円とマイナス200万円とを損益通算した200万円分の不動産所得として課税することはできず、単純に400万円に対して課税されることになるということです。(200万円の赤字は考慮されない。)

 

 そして、仮に信託財産にマイナスが生じたような場合でも、翌年にその損失を持ち越すことができません。

ケース2:信託財産(第1契約)と信託財産(第2契約)の損益通算は可能か?

 では、下図のように2つ以上の複数の信託契約を組成した場合、その複数の信託契約同士で損失と利益を合算して損益の通算をすることはできるのでしょうか。

 結論は、できません。

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 案件によっては、依頼者の状況に応じて、不動産ごとに信託契約を分けて組成する場合がありますが、そのような場合、信託契約ごとに計算を行わなければならない都合上、損益通算することはできません。


 以上のようなことから、信託契約をする不動産としない不動産の収益状況と今後の支出等を勘案して信託契約を検討しなければなりません。

 私は、公認会計士や税理士等の専門家の協力のもとで安心できる信託契約の組成を心がけています。

 今回紹介した事例は、様々な専門家にご相談の上、検討されることをお勧め致します。

 

以下、関連記事です。

 今回の記事で解説した損益通算についてご質問された方の中で、信託契約と委任契約を混同されている方がいらっしゃったので、家族信託とはそもそも何が出来るのかをまとめた記事を書きました。合わせてご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 相談会で、何故家族民事信託が役に立ちそうだと思われたのか経緯を確認すると、「賃貸で貸しているアパートの収益を得る権利と、元本を受ける利益を分けて処分することが出来ると聞いたんで。」という方がいらっしゃいます。これは受益権の複層化という内容です。少し分かりにくいので、こちらのメリットを図解で解説した記事はこちら。

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 民法改正で、遺言書が大きく変わったことをご存知でしょうか?近年、介護、認知症の状態になられた後に遺言書を自筆で書く場合も増えてきてますので、遺言書を記載される前に、事前知識として今回の民法改正は知っておかれると非常に役に立つ情報ですね。

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