銀行の抵当権の付いた不動産でも信託できるのか?
銀行の抵当権の付いた不動産でも信託できるのか?
「銀行の抵当権が設定された不動産を家族信託することはできるのでしょうか」
そういったご質問を受けることがあります。
銀行等の抵当権の付いた不動産を信託することは可能ですが一定の条件があります。
それは、担保を設定している銀行等の協力が必要となるということです。
不動産を信託した場合は所有権が移転することになるため、銀行等の同意が得られれば信託することができます。多くの場合、名義を取得する者への債務引受を条件とするしょうけれども、そのような条件を無しに信託できる場合もあります。
家族信託により銀行等に法的なリスクは生じるのか?
例えば、抵当権の付いた不動産を信託した場合、抵当権は消えることなく信託不動産についていきます。「信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利」(信託法第21条1項2号)として当然に信託財産で負担することになります。
そもそも随伴性で抵当権の「登記」が先にされていますから、信託で名義変更しても当然抵当権が優先しますので、信託によって所有権移転しようがしまいが、抵当権者である銀行等に大きな影響は無いと言えます。
一方で、抵当権で担保される「債務」自体は、当然には「信託財産としての受託者」で負担されません。
「抵当権は信託財産に付いてくるので、その抵当権で担保される債務も「信託財産としての受託者」で負担するはず。」と、思われるかもしれませんが当然には債務は「信託財産」では負担されません。したがって、何もしなければ、ローン債務者は「委託者」のまま、収益金管理口座名義は「信託財産としての受託者」になりますので、これは銀行等にとってリスクになるかもしれません。
よって、抵当権の付いた不動産を信託する場合、銀行等のリスクを回避するためには、信託契約の際に、信託後のローン「債務者」について、どうするかの「工夫」が必要になるかもしれませんね。
いずれにしても、担保権付不動産を信託する際には、銀行等に生じうるリスクをしっかりと踏まえたうえで、当該リスクへの対応がきちんとなされた提案を行うことが大切ですね。
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