「相続させる」旨の遺言と異なる遺産分割協議の成立の可否は?
先日、従弟が事故に合ったそうです。
赤信号を無視してきた車と接触したそうです。
幸い両者ともケガはなく、従弟は首が少し痛いだけと言っていました。しかし、車はエアバックが飛び出し、フロントは潰れたとのこと。
シートベルトの大事さを改めて痛感したそうです。
いつ事故に合うかはわかりません、日々気を付けて運転しないといけないですね。
遺言と相違する遺産分割の有効性
さて、先日次のような相談を受けました。
「父が先日亡くなりましたが、その際、公正証書遺言が見つかりました。そこには、父が住んでいた居宅を私に相続させる旨の記述がありました。しかし、私は別に居宅を構えており欲しくありません。
そこで、他の相続人である弟と妹との間で、この遺言とは異なる内容の遺産分割協議を成立させようと考えているのですが可能でしょうか?仮に可能であった場合、何か問題点はありませんか?」
という内容でした。
亡くなった父親が書いた遺言書とはいえ、遺された相続人にとって希望通りの内容とは限らないですよね。
実務でも、今回のようなケースは少なくありません。
このように、遺言書の内容と相違する遺産分割協議を成立させることは可能なのでしょうか。
結論から言うと可能です。
遺言書の内容と相違する遺産分割を成立させる際の注意点とは
ただし、注意すべき点が3点ありますのでその点を記載します。
相続人の特定が必要になる
まず、1点目です。
それは、遺言によらない財産の分け方を行う場合は、当然のことですが、共同相続人(複数の相続人)全員が遺言の内容を知ったうえで、遺産分割協議を行う必要があるという点です。
遺言書による相続の場合は、他の相続人がその内容を知らなくても相続することが可能です。
遺産分割協議を行うということは、全員の相続人間で成立させないと無効ですので、被相続人の生まれてから死亡までの戸籍謄本を取り寄せて、相続人を確定する必要があります。
もし、遺言書に遺言執行者が指定されていた場合は、その後の遺産分割協議を円滑に進めるうえで、遺言執行者に遺言と異なる遺産分割協議をすることについての了解を得ておいたほうがいいです。
不動産登記の方法
2点目の注意点は不動産の登記の仕方についてです。
原則は、まず遺言書の内容に基づいて相続登記をし、次いで贈与又は交換等を原因として所有権移転登記をすることになります。
つまり、二段階で登記をする必要があるのですね。
この場合、相続登記の登録免許税は固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)の0.4%で、贈与・交換による所有権移転登記の場合には固定資産税評価額の2%となります。
(ただし、法務局に対して遺言書の有無は分からない為、二段階の登記を経ずとも登記は受け付けられるでしょうが。。)
税法上の問題
3点目の注意点は税法上の問題についてです。
上記のように「相続させる」旨の遺言と異なる遺産分割協議が成立した場合、まず遺言によって特定の遺産が法律上当然に遺言書記載の相続人に直接移転します。その後の遺産分割協議の成立によって、当該遺産がさらに他の相続人に移転することになるということは、その間で贈与がされたものとして贈与税が課されるのではないかという問題が生じるのです。
しかし、税法上は、相続人間においては、贈与税等を課税されることはないようです。
ただし、相続人以外の者に対する特定遺贈を内容とする遺言の場合で、当該受遺者を交えて遺産分割協議を成立させ受遺者に何らかの遺産を取得させたときは、当該受遺者は、特定遺贈の目的物について相続税が課税されたうえで、それを相続人に譲渡して、他の財産と交換したとして譲渡所得課税がなされる可能性がありますので注意が必要です。
遺言は単独行為といって遺言する人が自分だけで作成することができます。そのため、遺された相続人にとっては都合が悪いと考えるケースも多くなります。
やはり、生前にしっかり話し合っておくことをお勧めいたします。
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