成年後見人の報酬ってどれくらい支払われるの?
みなさんこんばんは、ここ最近忙しくてなかなか時間が取れなかったのですが、ようやくまとまって時間が取れたのでブログを大きくカスタマイズしました。
記事が読みやすくなったと思いますので今後とも是非ご愛顧ください。
さて、家族民事信託の話題を中心にブログを書いていますが安心した老後を実現しようと思えば遺言や贈与など他の様々な制度の利用を検討する必要があります。
そして、その中に成年後見制度があります。今回は、その成年後見制度で一番気になる「後見人の報酬」について記述します。
皆さん、
「後見人の報酬額はいくらぐらいなの?」「行う業務によって報酬額は違うの?」
など、多くの疑問を持たれているのではないでしょうか。
後見人への報酬はいったい誰が支払うのか
法定後見人の報酬は、被後見人の財産の中から家庭裁判所が決定した額を後見人が自ら管理する預金通帳から引き出すことで支払われる仕組みになっています。
ということは、被後見人のご家族のどなたかが負担して後見人に支払われるのではないということです。
しかし、被後見人の財産の中から後見人に対して報酬が支払われるということは、結局将来的に相続人が引き継ぐ財産が減ることになります。
将来的に相続人である自分たちが受け取る財産が減るということは、どれくらいの金額が支出されるのか、その相場が非常に気になるところですよね。
成年後見制度の報酬体系とは?
今回は、後見人の報酬についての基本的な考え方をご説明いたします。
早速ですが、その相場について以下に詳しく見ていきましょう。
図に表すと次のようになります。
上記のとおり、後見人の報酬は「基本報酬」と「付加報酬」とに分かれています。基本報酬とは、月々の日常業務に対する報酬を指し、付加報酬は特別な後見行為(例えば不動産の売却など)を行った際に発生する臨時の報酬を指します。
後見人が普段とは違う後見業務を行った場合に報酬が増えるということですね。
① 後見人の基本報酬
日常業務を行った対価として財産額に応じて毎月発生するもの(月2〜6万円)で、おおむね次のような相場となっているようです。
以上については成年後見、保佐、補助の類型を問わず同額となっているようです。
付加報酬については、「②-1身上監護の特別な行為を行った場合」と、「②-2財産管理の特別な行為を行った場合」に大別されて、それぞれ家庭裁判所が金額を決定します。
②-1 身上監護の付加報酬は基本報酬の50%が上限
身上監護の特別な行為を行った場合というのは、例えば次のような場合です。
⑴ 被後見人が多数の不動産を所有しており管理が複雑である場合
⑵ 親族間に意見の対立などがあり、それらを調整しなければならない場合
上記のような場合に基本報酬額の50%までの範囲で臨時的に、または定期的な報酬が発生します。
②-2 財産管理の付加報酬の相場は数十万〜百数十万円
財産管理を行っていく中で特別な行為を行って、被後見人の財産が増えることになった場合に付加報酬が支払われます。
その代表的な行為の例は次のとおりです。
⑴ 訴訟や調停、示談などの賠償金や示談金などによって財産が増えた場合
⑵ 遺産分割協議によって財産が増えた場合
⑶ 不動産の売却や管理収入によって財産が増えた場合
以上のような場合には、その財産が増えた金額に応じて臨時的な報酬が発生します。
相場としてはおおむね数十万円から百数十万円といったところです。
③ 後見監督人等の報酬(相場:月1〜3万円)
また、親族の方が後見人になった場合でも、家庭裁判所の裁量で後見人に対する監督人が選任される場合があります。
この場合にもやはり監督人に対して報酬が発生することになり、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人の報酬の目安は共通して以下の通りです。
法定後見制度の報酬は合計月3万円~9万円程度
法定後見制度を利用した場合、後見人が被後見人の親族なのか、司法書士などの専門家であるかを問わず、後見人が「報酬付与の申立て」を家庭裁判所に行うことで被後見人の財産から支払われることになります。
後見人の報酬は後見人が申立てを行うことによって家庭裁判所が報酬額を決定し、被後見人の財産のなかから支払われることになります。
この申立ては任意ですので、そもそも親族の方が後見人になったような場合は、報酬の受け取り行わないケースも多くあります。
(確かに、被後見人の面倒を見ている親族としては報酬を受け取りづらいですよね。ただし、この点については違った見方、考えがあります。別記事でご紹介します。)
任意後見制度の報酬は合計月2万円~8万円程度
任意後見制度の場合の後見人の報酬については、法定後見の場合と違って、任意後見契約を行う両者(被後見人と後見人になる方)の話し合いによって決められます。
もちろん無報酬という選択も可能ですが、報酬を支払う契約を結んだ場合にはその通りに契約者同士で報酬のやり取りを行えばよく、法定後見の場合と違って家庭裁判所に申立てを行い審判を受ける必要はありません。
報酬を支払う場合には、おおよその目安として法定後見制度の報酬額である月額2〜6万円ほどになります。
ただし、後見人が専門家であるかどうかや、財産管理の複雑さなどによってあくまでも双方納得の行く金額で決定し、契約することとなります。
②後見監督人の報酬は月約2万円
それから、任意後見の場合には必ず後見監督人がつけられることになるため、後見監督人に対して報酬が発生します。
後見監督人の報酬は、被後見人の財産から支払われることになりますが、こちらは家庭裁判所への申し立てが必要で、報酬の額についても職務内容から家庭裁判所が決定します。
おおよその目安としては、月額2万円といったところです。
まとめ
上記をまとめると、結局法定後見・任意後見共に年額24万円〜108万円程度の負担があります。成年後見制度の利用はご本人が亡くなるまで続きますので、10年以上報酬を支払うというケースは少なくありません。仮にそうなった場合、10年累計で数百万円、時には一千万円を超える報酬がご本人からの財産から支払われるということになります。1年間の年額負担でみれば少ない金額に感じますが、累計で計算した場合は、大きな負担となる場合がある点には気を付けた方が良いですね。
成年後見制度は大いに有効利用できる制度ではあるものの、将来を見据えた活用が求められます。
不安のある方は知識に明るい専門家に相談されることをお勧めします。
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成年後見を考えた際に、最近よく比較されるのが家族民事信託です。相談時にも「どのように違うのか?」と聞かれることが多かったので、回答を記事にしました。