家族信託を利用した介護を考慮した相続対策とは?
以前、ある女性の方から次のような悩み相談を受けたことがあります。
「わたしは父親に対して、食事の世話や日用品購入に至るまで懇親的に介護して面倒を見てきました。そんな父親が先日亡くなり、悲しみに暮れていたとき、大阪で暮らしている兄から相続分の要求がありました。兄はこれまで全く父親の世話をせずに里帰りもほとんどありませんでした。にもかかわらず、わたしが父親に行った介護等は兄との財産分割で有利にならないと聞きましたがそれは納得いきません。」
このような事例は決して他人事ではなく、近年では社会問題になりつつあるようです。
確かに、懇親的に介護した人とそうでない人とで相続分に差が無いというのは納得いかないですよね。
介護は寄与分として考慮されるのか?
結論から申し上げますと、介護は寄与分に当たりません。
近時は介護が伴った際の遺産分割協議の難しさが大きな問題となっています。
なぜなら介護は扶養義務なのかそれとも寄与分の範囲であるのかというのが問題となるからです。
一見、被相続人が生前に介護が必要な状態で昼夜問わず連れ添って面倒を見ていたような場合、それは寄与分と考えていいように思います。
被相続人としては生前によく介護をしてくれたから財産を少し多めに渡してあげたいという気持ちが生まれるのは自然かもしれません。
しかし、介護は直接的に被相続人の財産を増加させるわけではありませんので寄与分に当たりません。
介護をした自分の苦労が認められず、他の介護をしていない相続人と取り分が全く同じというのはあまり気分がいいものではありませんね。
つまり、これらは争族になる可能性を秘めています。
このような場合、家族信託を活用して問題解決に繋げることができます。
家族信託を利用した柔軟な財産分割の方法とは?
家族信託を利用すると民法の相続法に捉われない自由な発想で財産を分割することができます。
例えば、介護をした方に7割、介護をしなかった方に3割といったような財産の分与も可能になります。
家族信託を利用するなど、相続が起こる前にしっかりと対策することで争族を未然に防ぐことができます。
しっかりと対策をして円満な財産承継を実現しましょう。
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