家族信託を利用する際の本人の判断力の判定方法は?
家族(民事)信託契約のご依頼をいただく際に、
「介護施設に父親が入所しているのですが、家族(民事)信託契約はできますか? 」
「医師から軽い認知症の疑いがあると言われたのですが、信託契約はできるのでしょうか?」
というようなご相談を受けることがあります。
確かに、家族(民事)信託契約締結に必要となる判断能力って分かりにくいですよね。
そこで、今回は信託契約締結に必要な判断能力について話したいと思います。
信託契約締結に当たり必要な判断能力を確認する流れ
① 要介護なのか要支援なのか、ご本人の状況を確認する
⇓
② ご本人と面談を行い、慎重に判断能力の有無を確認する
⇓
③ 判断能力の有無により、家族(民事)信託契約が締結出来るかどうかを個別に判断する
私は基本的に①〜③までを順次質問を通して、顔色等の様子を見ながら確認して判断します。
ここで注意する点は、介護保険制度における要介護認定と物事をきちんと理解する能力(判断能力)は必ずしも一致するのでは無いということですね。
(もちろん判断能力の有無を確認する上で介護度は重要な点ではあります。)
お客様から「認知症の診断が出ているから信託契約は出来ないのではないか?」と質問されることがありますが、家族(民事)信託契約はできないとまでは言い切れません。
判断能力の有無を公的に判断してもらえる機関があればいいのですが、そのような機関は無いのが現状です。
やはり、現時点では個別に面談を行って判断することになります。
私は高齢の方と信託契約を締結する場合は、要介護、要支援の各段階を確認しつつ、最終的にはご本人との面談を重ねて慎重に判断能力の有無を確認することにしています。
この判断能力の有無の問題は、家族(民事)信託契約を締結する場合だけではなく、遺言や任意後見申立等さまざまな場面で発生しますので個別の案件によって対応していく必要があります。
判断に迷うケースの場合は、専門家に相談することをお勧めいたします。
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