わかった!資産承継をオーダーメイドで実現する家族信託

家族信託を中心としての相続対策支援について誰でも分かるように解説します

家族信託の受託者は誰が資格者として適任か? 

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 家族信託を進めるに当たって、信託の目的と同様に重要な決定事項があります。それが「受託者は誰が資格者として適任なのだろうか?」という点です。

 今回はその点について記事を書きます。

 誰を受託者(財産を預かる人)とするのが最適か

 家族信託を利用する際の受託者を誰にするのか、という点は非常に難しい問題ですが、基本的には委託者にとって身近で堅実な親族を選任することになろうかと思います。信託には、託す側、託される側双方に強い信頼関係が必要になりますので、ほとんどのケースが子や孫などの親族を選任することになるでしょう。

 なお、私は最終的に財産を引継ぐ予定の者を受託者とするケースが多いように感じます。ただ、その場合は利益相反となる可能性があることに注意が必要です。詳しくは以下をご覧ください。

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 いずれにせよ受託者になる親族の方は、ほとんどの場合関係法令や会計帳簿等に詳しくないことが予想されます。

 受託者になられた方から「いろんな義務などがあって大変だなぁ。司法書士等の専門家には任せられないのか?」というご意見もよく聞かれますが、信託業法で禁止されていますので、専門家が反復継続して複数の受託者となることはできません。

munehisa0721.hatenablog.jp

 以上のようなことから、受託者は信頼できる堅実な親族を選定して、その受託者を司法書士などの専門家がサポートする形が最適なんですね。

 ご不明な点があれば、一度専門家に相談することをおすすめします。

 

 

以下、関連記事です。

 突然、実家に帰ると「家族信託でお前を受託者に下から、財産の管理は頼んだよ。」と言われたら困りますよね。今回は、財産を預かった受託者の業務について解説しました。 

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 「家族には相談しないで、家族信託を進めたいんですけど、出来ますか?」と質問されることがあります。この相談に対して、回答している内容を記事にしました。詳細は、記事をお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 家族信託の受託者に選任された方は、ご自身の財産と預かった信託財産を分別して管理しなくてはなりません。何故、分別して管理することが重要なのか解説した記事はこちらです。

munehisa0721.hatenablog.jp

家族信託の目的の決め方とその注意点とは?

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みなさんこんばんは。

 先日ビアガーデンに行ってきました。割引チケットを大量に購入したのですが、現時点で結構余ってしまっています。仮に、この枚数を自分で毎日行って使用したとすると、健康面で体にとんでもない反動が出てきそうですね。。(笑)

 家族信託の信託目的の決め方と注意点

 さて、家族信託を進めるにあたって注意すべき点は多々あります。その中でも、今回最も重要な点の1つである「信託目的」について言及します。

 実際に「家族信託を進めるにあたってまず何から検討したらいいの?」という質問はよく聞かれます。

 私は上記の相談があればまず、「何の為に信託したいのか?」という家族信託の中心となる部分を検討するところから始めることにしています。

 信託目的はズバリ「委託者の意思であり、受託者が信託の実務を行うにあたっての指針」となるものだからです。

 でも、目的を決めると言ってもなかなか難しいですよね。よくある例としては次のようなものがあります。

 「自分の安心した老後を実現するため」

 「高齢、認知症など財産管理が不安な配偶者の財産管理のため」

 「浪費癖があるなど財産管理が困難な子に代わって財産管理をするため」

 「親なきあとの障害のある子の財産管理と生活費支給ため」

 「円滑な相続・事業承継を実現するため」

 いろいろな目的の定め方があるものの、禁止されている事項以外であれば委託者(財産を預ける人)が自由に決めるので構いません。イメージとしては遺言書を作成する際、遺言者の思いを書く「付言」と同じような考えでいいのではないかと考えています。

 信託目的に身上監護に関わる事項を盛り込めるか?

 家族信託の信託目的を定める際に身上監護に関わる事項を盛り込むニーズがあります。しかし、そもそもそのようなことができるのかが問題です。結論からすると、家族信託はそもそも財産管理に関する制度ですので、身上監護に関する事項を盛り込むことはできません。

 解決策としては、家族信託を組成するのと同時に委任契約や任意後見契約など他制度と併用して利用しなければなりません。

受託者にどのような権限を与えるのか?

 さて次に、信託の目的を定めてそれを達成に向けて運用するにあたって受託者(財産を預かる人)に対してどこまでの権限を持たせるかが問題になります。

 例えば不動産であれば、管理・補修・修繕等などの行為に限るのか、それとも建て替えや売却、金融機関からの借入まで全面的に任せるのかなど様々な選択肢があります。家族信託を開始した後では、受託者はこの「信託目的」に従って信託財産の管理・活用を行います。このように「信託目的」とは、信託の目的に向かって達成しようとする目標であり、受託者の行動の指針となる2つの意味を持つ非常に重要なものです。

 なので、信託の目的は明瞭・明白でなければならずこの目的を曖昧にして信託を開始することは適切ではありません。

 なお、訴訟行為をさせることを主たる目的として、債権(売掛債権や貸金債権)等を信託することはできません。その点について記述している記事は以下にありますので興味のある方はどうぞ。

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 実は信託目的は例文が書籍等で多く出回っており、比較的軽視されがちですが家族信託を組成するにあたって非常に重要な要素なのです。

十分に熟慮する必要がありますので家族会議などを開催して家族全員で共有しておくことをおすすめします。

 

以下、関連記事です。

 もし、あなたのお父さんから突然「明日から、私のマンションの管理をお前に任せることにしたから。頼むよ。」と言われたらどうしますか?今回は、家族信託の受託者になったら最初に知っておきたい基礎知識についてまとめました。

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 お子さん、またはご家族に障がいがおありの方が家族信託を活用される事例も増えてきてますね。家族信託をどの様に活用すれば、障がい者の方を支援できるのかまとめた記事はこちらです。

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 「ひ孫まで財産を承継したいから家族信託を活用したいけど、家族信託なら財産承継可能なんですよね?」という珍しい質問がありました。実は、家族信託には30年ルールがあります。なので、ご自身の希望のひ孫さんまで財産を引き継げない可能性があるのです。今回は、こちらの注意点についてまとめました。

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家族信託は節税になるの?それともならない?

 

 

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 みなさんこんばんは、暑い日が続きますね。先日夕方、砂浜に散歩行きましたが浜風が気持ちよかったです。(日差しは相変わらずでしたが。。)

 なかなか機会がないのでいいものですね。

 

 さて、家族信託が相続対策として利用されることが多くなってきました。

その際にお客様からよく聞かれるのが「節税対策として利用するとメリットがあるのでしょうか。」という点です。

 やはり、節税効果があるかどうか、気になりますよね。

 今回は家族信託を税金面で記事を書きます。

 家族信託を利用しても直接的に節税のメリットはない

 結論は、家族信託を利用しても直接的に節税効果はありません。

 

 相続税の評価をするにあたって、信託財産については所有権ではなく受益権が評価の対象となります。この受益権の評価は所有権の評価と同じです。評価が同じなので、所有者が有する財産を信託財産にしたところで相続税の節税対策にはなりません。

 また、小規模宅地等の特例などの税務上の特例も引き続き利用できますので、税金が増えることもありません。よって、家族信託を利用しても税務上は有利にも不利にも働かないことになります。

 

 家族信託を利用したら間接的に節税メリットがある

 直接的に節税効果を見込むことはできませんが、家族信託を利用すると間接的に節税効果を得ることが可能です。

 

 例えば、所有者が認知症など意思表示が困難になってしまった場合、財産は凍結されてしまいます。このような場合、成年後見人を選任するケースが多々ありますが、この場合基本的に財産を自由に処分や運用をすることはできなくなります。

 

 一方、家族信託を利用すると、信託の目的の範囲内であれば処分や運用をすることが可能ですので、家族信託を運用していく中で受託者(=財産を預かった人)が節税効果の見込める処分・運用を行っていくことで間接的に節税の効果を生むことが可能になります。

 

 家族信託を開始しただけで直接的に節税効果を生み出すことはできませんが、家族信託開始後に、節税効果を生み出す運用を行うことで間接的に効果を発揮することができるのです。

 

以下、関連記事です。

 家族信託と合わせて検討されることが多い成年後見制度。成年後見制度って「何だったっけ?」と思われる方はこちらの記事も合わせてご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 事務所に相談にお越しになる方でも、家族信託と成年後見制度の違いを明確にご理解頂いている方は少ないので、こちらの記事で制度の違いを記載しました。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 「家族信託が良い制度なのは分かったけど、どうやって開始していけば良いの?」と疑問を持たれている方はこちらの記事をご覧ください。

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家族信託のデメリットとは?

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 みなさんこんにちは、もうそろそろお盆休みですね。

ただ、来週は台風が来るようですし、少し心配です。

  さて、家族信託が世間に浸透してきているようですが、デメリットはないのでしょうか?

 もちろん、どんな制度でも良いことばかりではありません。。成年後見制度と比べて家族信託はメリットがクローズアップされがちですが、デメリットはないのでしょうか。

 今回は、触れられることが少ない家族信託のデメリットについて記事を書きます。

家族信託の4つのデメリット

1.家族信託では節税対策にならない

 家族信託は相続対策になりますが、それはあくまで「財産承継についての対策」であり、「相続税の対策」として利用することはできません。相続対策という言葉を聞くと、税金の対策をついつい意識していましがちですが、家族信託は節税のためのスキームではありません。

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2.個人で家族信託を組成するのはリスクが高い

 家族信託を個人で組成することは、リスクがあります。なぜなら、その問題が表面化するのは本人の判断能力が失われたあとのケースが多いからです。かといって、弁護士や司法書士などの専門家にも精通している方と、そうでない方がいらっしゃいますので、専門家へ依頼する際にも注意が必要です。

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3.財産を包括的に信託できるわけではないので、財産に漏れがある場合はその対策も必要

 家族信託を組成する際には、信託契約書を作成しますが、そこには「全ての財産を信託財産とする」という記載は出来ず、個別に財産を特定して記載しなければなりません。もし、記載されていない財産があれば、その財産は信託の対象になりません。なので、信託されていない財産は、普通の相続で処理することになるので、注意が必要ですね。このような場合に備えて、遺言書を併用して対応する必要があります。

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4.家族信託を利用しても資産の損益通算ができない

 家族信託を利用した受託者(財産を預かった人)は、委託者(財産を預ける人)の財産を信託財産として管理することになります。この信託財産で仮に赤字が出たとしても、委託者の他の所得や収益と通算をして課税対象額を減らすことはできません。これを損益通算の禁止と言います。信託しようとしている財産のキャッシュフローがどのようになっているのかを確認しておかなければなりません。

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以下、関連記事です。

 相談者の方より、「家族(民事)信託の契約を父親(76歳)と結びたいと考えているのですが、他の兄妹に対して事前に承諾が必要なのでしょうか?」と言う質問です。確かに、家族信託を兄妹に内緒で進めたいというご意向をお持ちの方は多いですね。今回は、そのようなご質問に対する回答を記載しました。

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 ご主人に万が一が起こった時、ご主人様名義の自宅は、その自宅に住む妻と息子のどちらに相続した方がいいのでしょうか?この際のメリット、デメリットを家系図を交えて分かりやすく解説しました。

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 どのような場合に、家族信託を活用した方がいいのでしょうか?ご自身のご家庭で対策が必要な項目に合致するかどうか判断されたい方はこちらの記事でご確認ください。短い時間で、必要性があるかどうかご理解頂けると思います。

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3分でわかる!家族信託のコストシミュレーション

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 皆さんこんばんは。

 かなり暑い日が続きますが、心なしか今日の今朝は少し暑さが和らいできたように感じました。お盆ももうすぐですし、秋が近づいてきているのかもしれませんね。

 

 さて先日、家族民事信託の利用にあたって、どれくらいのコストがかかるのかを記事にしましたが、やっぱり分かりづらいというご意見を頂きます。

今回はそんな皆さんにいくつかの事例に当てはめて具体的に解説いたします。

【ケース別】費用シミュレーション

 ここではケース別に費用のシミュレーションをしてみたいと思います。

 依頼する専門家や信託する財産額、種類によってかかる費用は大きく増減しますので、費用シミュレーションはあくまで目安として参考にしてください。

 また、専門家へ依頼せずに家族信託を行うことは現実的に難しいため、ここでは専門家へ依頼することを前提にシミュレーションしたいと思います。

 なお、今回のシミュレーションにあたって基礎となる費用の算出方法については別記事で記載していますので参考にご覧ください。

上記①~⑤の合計金額が必要となります。

 ケース①【信託財産:現金3000万円】

 ①コンサルティング報酬      30万円

 ②信託契約書(案)作成費用    10万円

 ③公正証書の作成費用        4万円

                合計44万円(税別)

ケース②【信託財産:土地2000万円、建物1000万円】

・専門家のコンサルティング費用  30万円

公正証書化の代行費用      10万円

公正証書の作成費用        4万円

司法書士への登記依頼費用    10万円

・登録免許税           10万円

                合計64万円(税別)

 ケース③【信託財産:現金3000万円、土地2000万円、建物1000万円】

・専門家のコンサルティング費用  60万円

公正証書化の代行費用      10万円

公正証書の作成費用        6万円

司法書士への登記依頼費用    10万円

・登録免許税           10万円

                合計96万円(税別)

ケース④【信託財産:現金5000万円、土地5000万円、建物5000万円】

・専門家のコンサルティング費用 125万円

公正証書化の代行費用      10万円

公正証書の作成費用       10万円

司法書士への登記依頼費用    10万円

・登録免許税           35万円

               合計190万円(税別)

※ 仮に信託契約書を公正証書化しない場合は、公正証書に関する費用を控除すれば費用相場になります。

 

 なお、このような費用の詳細については別記事で記載していますのでそちらをご確認ください。

 一見すると高額な費用に思いますが、他の制度(遺言・生前贈与・成年後見制度等)を利用した場合にかかる費用や家族民事信託にしか実現できないメリット等を踏まえて、総合的に比較検討することが必要です。その為には、専門家に相談してみるのが近道です。

 

ご自身のご家庭に照らし合わせて最適な判断をするには、最寄りの専門家の意見を取り入れながら、進められることをお勧めいたします。

 

以下、関連記事です。

 家族信託を検討される方が比較されるのは成年後見制度が多いですね。コストは、成年後見制度の方が短期的に見ると安く感じます。ただ、中長期の視点でコストを比較すると皆さんはどの様に感じるでしょうか?それぞれのニーズと家庭によっても最適な方法は違いますが、今回はご質問が多い2つの制度のコストパフォーマンスを徹底比較しました。

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 成年後見人の報酬についてもご質問が非常に多いです。成年後見人の報酬について解説した記載した記事はこちらです。合わせてお読みください。

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 成年後見制度と家族信託のどちらを活用しようかと迷われる方は多いのではないでしょうか?今回は、比較検討される両制度の違いについて解説しました。

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家族信託にかかるコスト(費用)は?

 

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 皆さんこんばんは。じめじめ蒸し暑い時期に突入しています。

先日壁掛け扇風機を買いました。

上から風が来るので、空気が循環し心地いい風を送ってくれます。

しかも、邪魔にならないし、エアコンと併用するので電気代の節約にもなります。

今年の夏は大活躍してくれそうです。

 

さて以前、家族信託を利用する際の費用について記述しました。

意外に好評だったため、改めて内容を精査しましたのでご覧ください。

家族民事信託にかかかるコストは?


 家族民事信託は非常にメリットの多い制度ですが相応の費用がかかります。

  信託する財産の額や財産の種類・数によって費用は大きく増減します。特に信託財産に不動産が含まれるのか含まれないのかで大きく異なってきます。

 お客様にとって家族民事信託の導入にあたっては、まず「費用の目安」を知ることが大切です。

一般的な相場は以下のとおりです。

※ 預貯金及び不動産の合計額が1000万円~1億円程度である場合を想定しています。

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上記①~⑤の合計金額が必要となります。

 こんなに費用が掛かるのか!! と驚いた方もいるのではないでしょうか。

なぜこのような費用がかかるのかを簡単に説明いたします。

① コンサルティング報酬【費用相場:信託財産の1%】

 専門家(司法書士等)に信託内容を設計してもらうコンサルティング費用です。

 当然専門家に頼って契約書を作成する必要はありませんが、非常に難解な信託契約書を作成するのは至難の業です。

 何よりも、家族民事信託は「相続対策の1つの手段」に過ぎません。相続対策には他にも遺言や生前贈与、成年後見制度の利用などの手段がある中で、本当に家族民事信託がベストチョイスであるかを検討する必要があります。

 それらについて詳しい専門家に相談することは結果的に後々の問題を未然に防ぐことができる上に、コスト面においてもいい結果になると思います。

 このコンサルティング報酬は専門家によってまちまちですが、私も会員である一般社団法人家族信託普及協会の報酬基準が目安になるかもしれません。

 一部紹介いたします。

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② 信託契約書(案)作成費用【費用相場:10万円~20万円】

 家族民事信託の内容が定まると、次にその契約書の案(遺言信託の場合は遺言書の案)を作成する必要があります。信託契約書(案)を作成するにあたっても条項などを精査する必要があり、しかもその中には難解な事項が多くあり、専門家に依頼することは必須でしょう。

 この契約書作成費用は専門家によって様々ですが【10万円~20万円】くらいではないでしょうか。

③ 公正証書作成費用【費用相場:5万円~10万円】

 公正証書作成費用とは、公証役場で公証人に公正証書を作成してもらう手数料のことです。

 信託する財産額や契約内容によって増減しますが【5万円から10万円程度】と想定しておおけばいいかと思います。

ここで注意が必要なのは、そもそも信託契約書は公正証書で作成することは必要でありませんので、公正証書によって信託契約書を作成しなければこの費用はかかりません。

 しかし、私が以前書いた記事にもあるように、公正証書で作成する方がいいです。

下記の関連記事ありますのでご覧ください。 

④ 不動産登記費用【費用相場:7万円~15万円】

 信託財産に不動産を含む場合には、不動産の名義を委託者から受託者へ変更する手続きを行わなければなりません。司法書士に依頼せずに申請書や添付書類を作成し法務局で登記申請すれば、この費用はかかりません。

 しかし、家族信託に関する登記については、他の登記に比べ難易度が高いので、申請書の準備や法務局への登記申請など、煩雑な登記手続きを司法書士へ依頼するようにしましょう。

 司法書士に依頼する費用は信託する不動産の評価額や物件数によって増減しますが【7万円~15万円程度】と想定するとよいでしょう。

⑤ 登録免許税【費用相場:固定資産税評価額の0.3~0.4%】

 法務局での名義変更手続きの際に納付しなければならない費用がこの登録免許税です。登録免許税は固定資産税評価額を基準に以下のとおり算定することになります。

土地の場合・・・固定資産税評価額の0.3%

建物の場合・・・固定資産税評価額の0.4%

 たとえば、評価額3000万円の土地を信託する場合には、9万円の登録免許税がかかります。

 まとめ

 上記のとおり、一見すると高額な費用に思いますが、他の制度(遺言・生前贈与・成年後見制度等)を利用した場合にかかる費用や家族民事信託にしか実現できないメリット等を踏まえて、総合的に比較検討することが必要です。

 専門家に相談する方はこれらについて総合的に判断できる専門家に相談するようにしましょう。

 

以下、関連記事です。

 家族民事信託と成年後見人制度のどちらを活用しようかと迷われる方も多いのではないでしょうか?成年後見人にかかるコストについて解説した記事はこちらです。合わせてご覧頂くと、比較し易いと思います。

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 上記の関連記事をお読みいただくと、「あれ?これって任意後見契約と似てませんか?」とお気付きの方もいらっしゃるかもしれません。こちらの記事も合わせてどうぞ。

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 上記の関連記事をお読みいただくと、「これって遺言書と似てますよね?」と質問されたこともあります。こういう質問が出るということは、相続に関して事前にかなり調べている方が増えてきている傾向なので、素晴らしいですね。そんな疑問を持たれた方は、こちらの記事も合わせてお読みください。

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遺言書の検認の必要性

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 大切に使っていた冷蔵庫が壊れました。氷が作れなくなったのです。

これには、10年保証を付けていました。

調べてみるとこの冷蔵庫は買ってから、10年と1か月を迎えていました。

あと1か月早ければ・・・

 電気屋さんに修理を頼むと4万円かかるし、そのほかの部分も順番に壊れていくので、修理をするよりは、新しいものを買ったほうがいいと言われ、さらにショックを受けました。

 噂ですが、冷蔵庫は10年経つと壊れるようにできているそうです。ずるいですよね。

 

先日、このような電話がかかってきました。

 

家庭裁判所から『遺言書を検認しますので、立ち会われるように通知します』という旨の書類が届いたのですが、遺言書の検認とはいったい何ですか?」

 

 遺言書の検認とは、家庭裁判所に遺言書が確かにあったということを証明してもらうことです。

 

 主な目的としては、遺言書の存在を明確にして偽造されることを防ぐために行われます。

また検認の終了は相続人全員に通知されるため遺言書が存在することを相続人全員に周知させる効果もあるのですね。

 

 ここで注意が必要なのが遺言の内容の有効、無効の判断をするものではないということです。

 

もう少し中身を詳しく見ていきましょう。

遺言の種類はどんなものがあるのか

遺言には

 

・自筆証書遺言

公正証書遺言

・秘密証書遺言

  の3種類がありますが、

このうち、家庭裁判所での検認が必要なのは、自筆証書遺言と秘密証書遺言になります。

 以前記事を記載していますのでご覧ください。

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 公正証書遺言については、公証人が作成しているので、改ざんや偽造される可能性はないということで検認手続きをする必要はありません。

 

【なお、相続法改正にあわせて、自筆証書遺言について法務局で保管する制度が開始されます。(保管開始は2020年7月10日)。この法務局で保管される自筆証書遺言については、検認は不要の扱いとなります。】

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 もし自筆証書遺言/秘密証書遺言書を発見した時は、遅滞なく、相続開始地の家庭裁判所に提出して検認を行う必要があります。

 

 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません

 

 以上の手続きを守らない場合、五万円以下の過料に処される可能性があります。

また、遺言の保管者が遺言書を隠匿した場合には、相続欠格となる可能性もありますので注意が必要です。

 

検認の方法は? 

 遺言の保管者は、遺言者の最後の住所地又は相続開始地の家庭裁判所に検認を申し立てます。

 検認が申し立てられると、裁判所は申立人と相続人に対して検認期日の通知をします。これによって、相続人は遺言の存在を知ることになります。なお、この通知に対して裁判所に相続人が出頭するか、出頭しないは自由です。

 

 そして、検認期日では何人かの相続人が出頭しなかった場合でも裁判所は開封・検認の作業を進めます。この際、相続人に対し、遺言が自筆であるか、押印が遺言者のものであるかどうかを確認することになっています。

 検認後は検認に立ち会わなかった申立人や相続人等に検認がなされた通知がされ、遺言書は検認済証明書を添付して返却されます。

 

検認手続きは、申立てから検認までに少なくとも1カ月弱の期間が掛かっているようです。

 

 検認にかかる費用

 

  • 収入印紙:遺言書1通につき800
  • 連絡用の郵便切手:裁判所によって異なる(数百円程度)

まとめ

 検認手続きは必ず必要というわけではありません。

しかし、遺言書の中に不動産に関する内容が記載されていた場合は登記手続が発生しますが、検認手続きがされていない遺言書ではこれもできません。

 また、金融機関も検認を受けていない遺言書では手続を行ってくれないことも多いようです。

 つまり、検認がないことによる不利益はかなり大きいと言えるでしょう。

 

以下、関連記事です。

 遺言書は書いた方が良いと思われている方も多いと思いますが、『もし、あなたがこんな状況だったら、遺言書を書かない方が良い』という事例をまとめて解説しました。

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 相談会で「制度のことは分かったし、将来的に活用したいんだけど、一体どのくらい費用がかかるの?」と質問されることが多いので、多くの方々が比較される家族民事信託と成年後見制度を比較して、解説しました。遺言書以外の対策によるコストも知っておきたい方はこちらも合わせてお読みください。

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 成年後見人制度は一般の方でもご存知の方が増えて来たと共に、詳しい内容について質問されることも増えて来ました。今回は、成年後見人の報酬について解説しました。

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農地は家族信託できるのか?

 

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 暑い日々が続いていますね。

 香川県は日本一のうちわの生産地だとご存じでしたか?今では、広告のツールであったり、祭りの宣伝であったり、さまざまなデザインを施し国境を越えたひそかなブームになっています。

 先日テレビを見ていると、うちわを研究している大学の教授がうちわについて熱く語っていました。

そこではアナウンサーがある質問をしていました。

「一番ベストな扇ぎ方は?」 

 私は、どうしてもそれが知りたくて前のめりになりました。

 すると、教授は、

「自分の好きなように扇いでください。」と言いました。

まぁ、そういうことですね。

 農地は家族信託できるのか?

さて、先日このような相談を受けました。 

 「私は高齢で足腰が弱り、満足に農地を耕作することができません。これらの田・畑を家族信託を利用して有効活用することはできるのでしょうか?」

 

 近年、少子高齢化に伴って耕作放棄地が増加しているようです。確かに私が住む香川でもやはり耕作していない農地が増えているように感じます。その為、上記のような相談が多数寄せられるようになったのですね。

 しかし、田・畑などの農地は農地法という法律で規制されているため、他の宅地や雑種地などと比べて自由に処分等を行うことができなくなっています。

 

田畑をそのまま田畑として(農地法第3条)利用する場合

 私は、農地を農地のまま利用することを目的として(農地法第3条)、家族信託を利用することは原則として出来ないと考えています。

 

 そもそも農地は所有者自身が耕作するか、他の農業従事者に貸して耕作することが基本です。その為、農業従事者でない子供などに財産管理を託すという信託の概念は沿わないです。

 よって、そのような考えからすると農業従事者である子供に信託する場合は可能である余地があると考えますが、当該農地のある農業委員会との打ち合わせが必要でしょう。

田畑をその他の地目に変更して(農地法第4、第5条)利用する場合

 農地を農地以外の利用目的で(農地法第4条、第5条)で信託したいという場合はどうでしょうか。

 このようなニーズは多くあるようです。

 将来的に農地を処分したい、しかし農地の所有者が高齢で、農地の処分前に認知症等で判断力が衰えてしまう可能性があるなどの理由で、信託を利用するケースがあります。

 これに関しては、条件付きではありますが可能ではないかと考えています。

 ただし、この場合、農地に関する部分について、農業委員会の許可等の手続きを経て効力が発生することとなる「条件付信託契約」という取り扱いになります。

(当然、効力が発生してない段階では、信託を原因とする受託者への所有権移転登記もできません。)

「条件付信託契約」をして将来の管理・処分がスムーズになるように備えるには次の2つの方法が一般的です。

① 農地オーナー自ら「農地転用」の許可等の手続き(農地法第4条)を行い、農地以外の現況にすることで農地法の規制から外す方法です。

 

② 市街化区域であれば、農業委員会への届け出だけで済むため、市街化区域に限り信託の委託者と受託者の双方からの申請で、「転用目的権利移転」(農地法5条)により受託者への所有権移転登記を行い、そこから受託者による開発や売却手続きを行う方法です。

 ただし、農業委員会の許可を取る際は、転用の目的を定めて許可を取る必要があります。よって、上記2つの方法による場合を利用しようとする場合でも、使途を定めずに農業委員会の許可を取ることはできない、ということに注意をする必要があります。

 

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「相続させる」旨の遺言と異なる遺産分割協議の成立の可否は?

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 先日、従弟が事故に合ったそうです。

赤信号を無視してきた車と接触したそうです。

幸い両者ともケガはなく、従弟は首が少し痛いだけと言っていました。しかし、車はエアバックが飛び出し、フロントは潰れたとのこと。

シートベルトの大事さを改めて痛感したそうです。

いつ事故に合うかはわかりません、日々気を付けて運転しないといけないですね。

遺言と相違する遺産分割の有効性

 さて、先日次のような相談を受けました。

 「父が先日亡くなりましたが、その際、公正証書遺言が見つかりました。そこには、父が住んでいた居宅を私に相続させる旨の記述がありました。しかし、私は別に居宅を構えており欲しくありません。

そこで、他の相続人である弟と妹との間で、この遺言とは異なる内容の遺産分割協議を成立させようと考えているのですが可能でしょうか?仮に可能であった場合、何か問題点はありませんか?」

 という内容でした。

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 亡くなった父親が書いた遺言書とはいえ、遺された相続人にとって希望通りの内容とは限らないですよね。

 実務でも、今回のようなケースは少なくありません。

このように、遺言書の内容と相違する遺産分割協議を成立させることは可能なのでしょうか。

 結論から言うと可能です。

 遺言書の内容と相違する遺産分割を成立させる際の注意点とは

ただし、注意すべき点が3点ありますのでその点を記載します。

相続人の特定が必要になる

 まず、1点目です。

 それは、遺言によらない財産の分け方を行う場合は、当然のことですが、共同相続人(複数の相続人)全員が遺言の内容を知ったうえで、遺産分割協議を行う必要があるという点です。

 遺言書による相続の場合は、他の相続人がその内容を知らなくても相続することが可能です。

 遺産分割協議を行うということは、全員の相続人間で成立させないと無効ですので、被相続人の生まれてから死亡までの戸籍謄本を取り寄せて、相続人を確定する必要があります。

 もし、遺言書に遺言執行者が指定されていた場合は、その後の遺産分割協議を円滑に進めるうえで、遺言執行者に遺言と異なる遺産分割協議をすることについての了解を得ておいたほうがいいです。

不動産登記の方法

 2点目の注意点は不動産の登記の仕方についてです。 

 原則は、まず遺言書の内容に基づいて相続登記をし、次いで贈与又は交換等を原因として所有権移転登記をすることになります。

 つまり、二段階で登記をする必要があるのですね。

 この場合、相続登記の登録免許税は固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産税評価額)の0.4%で、贈与・交換による所有権移転登記の場合には固定資産税評価額の2%となります。

(ただし、法務局に対して遺言書の有無は分からない為、二段階の登記を経ずとも登記は受け付けられるでしょうが。。)

 税法上の問題

 3点目の注意点は税法上の問題についてです。 

 上記のように「相続させる」旨の遺言と異なる遺産分割協議が成立した場合、まず遺言によって特定の遺産が法律上当然に遺言書記載の相続人に直接移転します。その後の遺産分割協議の成立によって、当該遺産がさらに他の相続人に移転することになるということは、その間で贈与がされたものとして贈与税が課されるのではないかという問題が生じるのです。

しかし、税法上は、相続人間においては、贈与税等を課税されることはないようです。

 

 ただし、相続人以外の者に対する特定遺贈を内容とする遺言の場合で、当該受遺者を交えて遺産分割協議を成立させ受遺者に何らかの遺産を取得させたときは、当該受遺者は、特定遺贈の目的物について相続税が課税されたうえで、それを相続人に譲渡して、他の財産と交換したとして譲渡所得課税がなされる可能性がありますので注意が必要です。

 

 遺言は単独行為といって遺言する人が自分だけで作成することができます。そのため、遺された相続人にとっては都合が悪いと考えるケースも多くなります。

 やはり、生前にしっかり話し合っておくことをお勧めいたします。

 

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こんなケースは相続人になる? ならない?

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みなさん、こんにちは。

蚊が多く飛ぶ季節になりました。

寝ているときに耳元でささやく蚊の声は不快としか言いようがありません。

蚊取線香や、ワンプッシュで蚊がいなくなるスプレーをしますが、即効性はありません。

やはりやっつけるしか快眠する方法はないのですね。 

 

 さて、普段わたしたちは様々な方法で相続に備えての対策を行っていますが、誰が相続人になるかは、相続の一番の基本です。

以前、「自分が亡くなった時の相続人は誰なのか?」という記事を書きました。

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 配偶者の有無、子どもの有無など様々なケースで相続人が相続する割合が変わることが分かります。

 でも、「配偶者といっても離婚した配偶者は相続人になるの?」「まだ産まれていない子どもは相続人になるの?」など、細かな点で疑問が出てきます。

 そこで、今回は相続人であるかどうかが問題になる場合を紹介いたします。 

まだ産まれていない子ども(胎児)

相続開始の時にまだ生まれていない胎児は、相続に関してはすでに生まれたものとみなされます。よって相続人としてカウントすることになります。

 ただし、死産であった場合は相続人とはなりませんので注意が必要です。

非嫡出子(ひちゃくしゅつし)

 非嫡出子という言葉を聞いたことはありますか。婚姻の届出をした夫婦間で出生した子どものことを嫡出子と言い、当然両親の子どもとなります。

 逆に、婚姻関係のない男女間で出生した子どもは非嫡出子といいますが、この場合は民法上の子どもとして相続人とされるのでしょうか。

 

 非嫡出子の場合は、父親と母親とで結論が違うことになります。

 母親との関係では、非嫡出子は出生により母子関係が生じます。分娩の事実がありますので当然母親との関係では相続人となるのですね。

 

 では、父親との関係ではどうでしょう。

 父親は子どもを認知して初めて父子関係が生じます。認知された非嫡出子は父親との関係で相続人となりますが、認知されない子どもは父親との関係で相続人たる子どもとはなりません。

養子

 養子は実子と全く同じ扱いになりますので、当然、養親の相続人となります。

 また、養子になったといって実の父母と親子でなくなるわけではありません。

 つまり、養子は、実父母と、養父母の両方から相続できるということです。

ただし、特別養子(実親との親子関係が終了する養子)は、養父母の相続人になるだけです。

離婚した元配偶者と子ども

被相続人と離婚した元配偶者は赤の他人ですので、当然、相続人ではありません。

しかし、子どもは、離婚によって親子関係がなくなるわけではありませんので、父と母のどちらが引き取ったかにかかわらず、嫡出子としての相続権があります。

再婚した配偶者と子ども

被相続人と再婚した配偶者は、もちろん相続人になります。しかし、その連れ子は、被相続人とは親族関係ではありませんので、相続人ではありません。

 相続人となるためには、養子縁組を行う必要がありますね。

内縁の妻、夫

相続人になる配偶者とは、婚姻届けを出している法律上の配偶者のことをいいます。

最近では、入籍していない夫婦(事実婚)も増えていますが、このような内縁関係の妻や夫は相続人になりません。

事実上、離婚関係の配偶者 

配偶者に相続権があるかどうかは、原則として相続開始時の戸籍で決まります。

たとえ、何十年も別居状態にあったり、離婚の協議をしている最中に被相続人が死亡した場合でも、正式に離婚するまでは相続権があります。

 

 上記のとおり、相続人といえども様々なケースが考えられます。特に近年は価値観の多様化によって家族の形も大きく変わってきています。自分たちだけで相続人を決めつけて間違いがあるなどすると大変です。慎重な判断が求められるのですね。

 

以下、関連記事です。

 「もし、夫が亡くなった場合、自宅は私に相続した方がいいのでしょうか?それとも息子の方がいいのでしょうか?」と悩まれる方は多いのではないでしょうか。今回は、そんな場合の相続のメリット、デメリットについて解説しました。

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 相続対策として最初に思い付くのは『遺言書』が一番多いのではないでしょうか?安心して子どもに財産を引継ぐ為に知っておきたい遺言書の基礎知識についてまとめました。 

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 「私に万が一のことが有れば、まず家は妻に相続して、妻が亡くなった後は同居している長男に相続したいのですが、どの様に遺言書を書けばいいのでしょうか?」といった内容のご相談は多いですが、残念ながら遺言書ではこのご希望を叶えることが出来ません。その理由と、希望を叶える為の対策について記載した記事はこちら。

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信託契約書は紛失の恐れがあるので公正証書で作成しよう!

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 みなさん、こんばんは。

先日G20サミットが大阪で開催されました。

お隣の兵庫で仕事があり行く予定にしていたのですが交通規制の影響もあり、急遽キャンセルに。

各国の代表者が大勢いらっしゃるわけですから当然ですよね。

甘く見ていました、反省。

 

 さて、以前から「家族民事信託の契約書は公正証書で作成した方がいい」という内容のブログを書いていますが、今回は最終回の第5回目です。

 分かりやすいように解説しましたので最後までご覧ください。 

家族民事信託契約書は公正証書で作成しよう

 おさらいになるのですが、そもそも家族民事信託契約書は私文書で作成できますが、私はよほどの特別な事情が無い限り公正証書で信託契約書を作成することをお勧めしています。

 

それは次の5つの理由から私は公正証書での作成をお勧めしています。

1.公正証書遺言と同様の効果があるので公正証書で作成すべき!

2.任意後見契約と同様の効果があるので公正証書で作成すべき!

3.金融機関で口座開設をする際に有利であるので公正証書で作成すべき!

4.登記する際の信託目録への記載事項で有効であるので公正証書で作成すべき!    

5.私文書で信託契約書を作成した場合、紛失の恐れがあるので公正証書で作成すべき!

 上記の点を随時詳細に解説いたしますが、今回は「5.私文書で信託契約書を作成した場合、紛失の恐れがあるので公正証書で作成すべき!」という点についてご説明します。

 私文書で組成した家族(民事)信託は紛失の恐れがあるが、公正証書で組成した場合は紛失の恐れなし!

 先にも述べましたが家族(民事)信託は私文書で作成することが可能です。

 私文書で作成することが可能ということは、極端な話をすると自宅のパソコンなどで作成し、委託者・受託者がそれぞれ署名押印すれば信託の組成は可能ということです。

 それをわざわざ公証役場で公証人に作成してもらうメリットがどこにあるのか。誰もがそのような疑問を持たれることと思います。

 

 私文書で作成した場合は当事者が無くしてしまった場合、もはや再度同じ契約書を用意することはできません。

 

 しかし公正証書で作成した場合、その原本は公証役場で保管されます。よって、当事者が万が一交付された家族(民事)信託契約書を紛失した場合でも再度交付の請求をすることができ、紛失の恐れがありません。

 

 公正証書で家族(民事)信託を行う理由として大きく5つを紹介しましたが、実は最も重要な点と言っても過言ではないかと思います。 

 

 以上のことから、私はお客様に家族民事信託を提案する場合、家族民事信託契約書は公正証書で作成することをおすすめしています。

 せっかく作成するのであれば安心できる契約書を作成して、想いを託したいですよね。

 

 以下、関連記事です。

 「どうして、家族民事信託契約書は公正証書で作成した方がいいの?」と相談時によく聞かれるのでこちらの記事で必要性について解説しました。

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 相続のことを考えた時に最初に思い付くのは、遺言書ではないでしょうか。家族民事信託の契約書も公正証書遺言と同じ効果があることを説明すると驚かれる方がいらっしゃいます。今回は、家族民事信託の契約書について解説しました。

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 預金を信託する場合は、信託口口座を開設します。今回は、信託口口座を開設する際に注意する項目について解説しました。

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家族の「相続」が「争族」になってしまうのはどんな場合?!

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 みなさんこんばんは。

随分暑くなってきました。ビールの美味しい季節ですね。

もう少しで梅雨も明けるとのことで、本格的な夏ももうすぐです。

 

 さて、ご家族の仲が円満であって欲しいというのは誰も願っているのではないでしょうか。しかし、実は「相続」がきっかけで家族が「争族」になるという悲しい現状が数多くあることをご存じでしょうか。

そして、それは

「ウチには財産なんて大してないし、相続で揉めることなんてない。」

「仲が良好なウチの家族が争うなんてありえない。」

と考えている方こそが注意しなければならないのです。

なぜ「争族」が起こるのか?

 わたしは以前、「遺言書を書いておく必要性の高い事例」ということで2回に分けて記事を記載しました。そこでは相続が発生する前の段階で、既に争いが起こる可能性が高いというケースに遺言書で対応しましょう、と遺言書の作成を推奨しています。

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 今回の記事は既に相続が発生してしており、これから遺産分割協議を行うというような場合で争族になってしまって揉めてしまうケースを紹介します。

 大きく分けて下記の4つ程が考えられます。

 

 ① 相続人の1人が財産を独占しようとする

 ② 財産の全容がわからない 

 ③ 遺産分割協議に応じない 

 ④ かたくなに法定相続分を主張する相続人がいる

①相続人の1人が財産を独占しようとするケース

 遺産分割において相続人のうちの1人が財産を独占しようとするケースに争族になっている場合が多いです。

 例えば、それまでは何ら親族間でのやりとりを行って来なかった相続人の1人が、突如として被相続人の死期が迫っていると聞きつけた途端に、被相続人の面倒を見たりして財産を独り占めしようとするケースがあります。

 また、被相続人の生活の面倒を見ていた、介護をしていた、家業を継いだなどの理由で、1人の相続人が財産を独占しようとするケースなどが挙げられます。

②財産の全容がわからない 

 被相続人が年齢を重ねたことによって判断能力が衰えた際、同居している相続人の1人がその財産を管理していた場合に起こる問題です。

 被相続人の死後「親の財産は一切ない」などと言って財産の全体像を明かさないときなどです。銀行などに預金があった場合、その預金を不正に下ろして隠したりするなどして、隠し財産を作ってしまうことなどが考えられます。

 また、被相続人が亡くなる前に、入院費などの名目で貯金を一気に下ろしてしまうなどの場合もこのような問題が起こります。このようなことが起こってしまうと、遺産確定のための民事裁判を行う必要もあります。

③遺産分割協議に応じない 

 寄与分被相続人の事業を手伝い財産を増やした、療養看護に努めた場合など)を認めない相続人、あるいは自分の特別受益(贈与や遺贈など特別に被相続人から利益を受けていること)を認めようとしない「常識が通用しない相続人」がいる場合など、一人でも話し合いに合意しなければ遺産分けを行うことができません。

④かたくなに法定相続分を主張する相続人がいる

 それまで親の介護などに携わったことがなく、親兄弟に迷惑をかけてきた人に多くみられるようです。

以上のようなことが「争族」となってしまう例として挙げられますが、皆さんのご家族は如何でしょうか。少しでもこれらのケースに当てはまる可能性があるようであれば一度専門家に相談しては如何でしょうか。

 

 家族の「相続」が「争族」にならないように、財産をしっかりと把握し、生前からきちんと対策をしていくことが解決策だと言えます。



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 父の相続発生前に長男だけ生前に900万円贈与を受けていた。相続総額3000万円を兄弟3人で1000万ずつ分割して相続するとなると、長男だけ1900万円受け取ることになりませんか?この様な特別受益の事例について解説しました。

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 この様な事例に該当する場合、「遺言書を書かない方が良いです。」とお伝えすることも多いです。そんな、遺言書に向かいない事例をまとめた記事はこちらです。

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家族信託を設計する際の主な5つの方向性

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 先日、子供を保育園に送っていくとプールが設置されていました。

子供たちは喜々とした表情を浮かべて、とても楽しみにしているように見えました。

子どもの好奇心にはパワーをもらい、私も童心に帰って泳ぎたくなりますね。

 

 さて、家族(民事)信託を進めるにあたっては様々なパターンがあります。

そのため、まずはお客様からのヒアリングによって方向性を決めないといけません。

 大きく分けると主に下記の5通りあります。

① 認知症対策

② 生前の財産管理対策

③ 遺産分割対策

④ 共有財産対策

⑤ 数次相続対策(受益者連続)

 

それぞれの特徴を見ていきましょう。 

認知症対策

 誰もが認知症に対する不安を抱えています。

 家族(民事)信託を元気なうちに設計しておけば、もしも本人が認知症になり判断能力が低下したとしても、受託者が本人に代わって財産管理を行えますので、認知症になってもスムーズな財産管理が行えます。

 例えば、子供を受託者にして家族信託をしておけば、親が老人ホーム等に入所して空き家になった実家を子供の判断で処分して親の生活費に充てるというような事が可能です。

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②生前の財産管理対策

 後継者にそろそろ経営を任せたいが、株価の評価が高くて後継者に自社株式を譲渡できない。

また、後継者が若いのでまだ安心して会社を任せることができない。そのような悩みをお持ちの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 このようなケースに家族(民事)信託は有効であり、株価評価が下がったタイミングを見計らって生前贈与することができますし、引き続き議決権については指図権を父に残して、会社経営の重要な局面にあたっては影響力を保つことができるようになります。

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③遺産分割対策

 相続が発生した時に問題になるケースの1つとして遺産分割協議が整わない場合が挙げられます。何らかの理由で相続人間で話がまとまらないということですね。

 このようなケースにも家族(民事)信託は有効です。 

 信託を組成した際の信託財産は所有者(委託者)の財産ではなくなるので、委託者が死亡した場合に行う遺産分割協議の対象財産とはならずに、財産帰属者にそのまま承継されることになります。遺産分割協議を経ずに財産の帰属先が決まるというのは遺言と同じような効果があるということなんですね。

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④共有財産対策

 相続人が複数いる相続では、場合によっては1つの不動産を複数人の相続人が共有することもあります。

では、その内の誰か1人が先に亡くなるとどうなるでしょう? 

 その子どもたちである甥や姪などに持ち分が相続されることになりますので、共有者の数が増え、また通常相互の関係性が希薄になりますので管理が複雑になります。

 

 そうなると将来の売却や大規模な修繕について全員の意見がまとまらず、手の施しようがなくなってしまう可能性があります。しかも、兄弟姉妹の中に高齢者の方がいて認知症を患うことになると大変困ります。

 そこで、持分のある人を受託者に決め、信託契約を結んで、財産管理に支障がないように検討する必要があります。さらに将来全員で売却して金銭を共有者で分配しようということになった場合でも、受託者である子どもとその他の兄弟姉妹で話し合いがまとまれば売却することも可能になります。

 

⑤数次相続対策(受益者連続)

 自分が亡き後は妻、妻亡き後は長男というように、2次相続以降の資産の承継先まで自分で指定することができます。この機能により、自分の希望する順番で何段階にも資産承継者(=「受益者」と言います。)の指定が可能となります。

 また、1次相続による資産承継者(高齢の配偶者など)が認知症や障害により、遺言等で次の承継者を指定できない場合に、その人に代わって資産承継者を指定できます(遺言を書いたのと同じ効果を出せます)ので、後々の遺産分割協議による争いの余地を排除できます。

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まとめ

家族(民事)信託をうまく使えば様々な対策が非常に柔軟に行えるということがお分かり頂けたのではないでしょうか。

もしかしたら、今まで不可能だと言われたような相続対策が実現出来るかもしれません。

この記事を読まれて、ご自身の悩みが解決できるかもと感じられたら幸いです。

 

 

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 講演会で「ご自身、またはご家族が認知症になった場合の対策はお済みですか?」と質問すると、今まで挙手された方は数える程しかいらっしゃいません。認知症対策を1歩でも前に進めたいと思われる方はこちらの記事も合わせてどうぞ。

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 日本は人口減少社会に入って久しいですが、相続対策を生前に行なっている方は少なく、争族となってしまう事例もよく聞きます。争族を招かない為の一例として家族民事信託を解説した記事はこちらです。

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登記する際の信託目録への記載事項で有効であるので公正証書で作成しよう

 

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 みなさん、こんばんは。

先週末、地元ではホタル祭りがありました。

少し田舎に行くとまだホタルがいるみたいなので、時間が合えば見に行きたいなと思っています。

 

 さて、以前から「家族民事信託の契約書は公正証書で作成した方がいい」という内容のブログを書いていますが、今回は第4回目です。

 皆様からの声をお聞きし、分かりやすく解説しましたので、最後までご覧頂ければ、幸いです。

家族民事信託契約書は公正証書で作成しよう

 おさらいになるのですが、そもそも家族民事信託契約書は私文書で作成できます。

しかし、私は公正証書で信託契約書を作成することをお勧めしています。

 

それは次の5つの理由から私は公正証書での作成をお勧めしています。

1.公正証書遺言と同様の効果があるので公正証書で作成すべき!

2.任意後見契約と同様の効果があるので公正証書で作成すべき!

3.金融機関で口座開設をする際に有利であるので公正証書で作成すべき!

4.登記する際の信託目録への記載事項で有効であるので公正証書で作成すべき! 

5.私文書で信託契約書を作成した場合紛失の恐れがあるので公正証書で作成すべき!

 

 上記の点を随時詳細に解説いたしますが、今回は「4.登記する際の信託目録への記載事項で有効であるので公正証書で作成すべき!」という点についてご説明します。

 

 4.はこれまで説明してきた1~3とは少し違った視点からのアプローチです。

公正証書は不動産の登記をする際の信託目録への記載事項で有効

 家族(民事)信託は不動産を信託するケースが多くあります。

このような場合、不動産の登記には信託契約の条項を信託目録として登記することになっています。

 では、いったい信託契約書の中のどの条項を登記すべきなのか、実は私たち専門家にとっても難しい点です。

 なぜなら、不動産の登記事項に記載された条項は閲覧に供されることになるため誰でも内容を把握することができるようになるからです。

 誰でも内容を把握することができてしまうと、問題のある場合があります。

問題のある場合の最たるものとして「残余信託財産の帰属権利者」があげられます。

 

 家族(民事)信託は遺言と同様の効果として財産の帰属権利者を定めることができますが、信託終了後の財産の帰属権者を実名で登記すると将来的な財産承継者が事前に誰にも分かることになってしまうからです。

 

 このような場合に、公正証書で作成された信託契約書の条項を引用して登記するというテクニックが有効となります。公正証書で作成された信託契約書の場合、公証役場に保管された公文書が存するので登記官もその内容の特定が容易であるので登記を受理しやすいというメリットを受けることが出来ます。

 一方、私文書で作成した信託契約書を引用することでは不十分であるとされ、登記官によっては登記を行うことに躊躇される場合が考えられます。

 

 以上のことから、私はお客様に家族民事信託を提案する場合、家族民事信託契約書は公正証書で作成することをおすすめしています。

 せっかく作成するのであれば安心できる契約書を作成して想いを託したいですよね。

 

以下、関連記事です。
 不動産に信託を活用した場合、登記が必要となってきます。登記をするので、情報が公開されますよね。不動産を信託を活用して登記する場合に、事前に知っておきたいポイントについて解説した記事はこちらです。

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 稀に「家族民事信託を活用したいと思うんだけど、受益者に内緒にすることは出来ませんか?」というご質問を頂く場合があります。その様な質問について答えました。

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 こんなケースだと、遺言書を書かない方が良いと判断される場合があるのはご存知でしょうか?遺言を記載する時に気を付けるケースについてまとめました。

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