わかった!資産承継をオーダーメイドで実現する家族信託

家族信託を中心としての相続対策支援について誰でも分かるように解説します

「徹底比較!!家族民事信託と成年後見制度のコストパフォーマンス」

f:id:munehisa0721:20190619162734j:plain

 みなさんこんばんは、6月になって蒸し暑くなってきました。

我が家のシェルティも早くも陰を探して徘徊しています。

 休日にでもペットショップに行って毛を刈ってあげようかと思います。

 

 さて、家族民事信託は成年後見制度と様々な面で比較されるわけですが、その中でも皆さんが気になるのがやはり「ランニングコスト」だと思います。

 今回はその点について比較をしながら解説したいと思います。

 家族民事信託を利用する際のコストは?

 家族民事信託を組成する場合、開始に際して専門家へのコンサルティング報酬及び登記費用、公正証書作成費用がかかります。

 専門家(弁護士・司法書士等)へのコンサルティング報酬は基本的には自由ですので、依頼する専門家によって報酬はまちまちですが、一般社団法人家族信託普及協会では会員に対してコンサルティング報酬の基準を提示しています。

 これが1つの基準になるのではないでしょうか。 

  一般社団法人 家族信託普及協会

これらを簡易にまとめると下記のような費用明細になります。

f:id:munehisa0721:20190613200110p:plain

さらに詳細について気になる方は下記記事をご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 費用目安を参考にすると家族民事信託を利用する際の初期費用は40万円~といったところでしょうか。最低でも40万円~というのは正直高いなぁ、と感じられた方もいると思います。

 しかし、ここで同様の制度である成年後見制度と比較してみましょう。

(なお、家族民事信託を組成した後の受託者への報酬は、信託内容によります。しかし、どのような内容であれ基本的に受託者は親族がなるケースがほとんどであるため、親族外の第三者に報酬を支払うケースは無いといっていいでしょう。)

(法定)成年後見制度のコストは?

 法定後見の場合、後見人が家庭裁判所に対して報酬付与審判の申立てを行うことによって、家庭裁判所が後見人の報酬を決定することになります。

f:id:munehisa0721:20190612211212p:plain

 この報酬の算出基準は示されていませんが、原則として1年間の後見人の業務内容や本人の年間収支状況、保有財産などを元にして決定されており、基本報酬が年間約24万円から72万円程度となっているようです。

 上記基本報酬とは別に、例えば不動産の売却、遺産分割協議を成立させるなど普段の業務とは違った特別な業務を行った場合は、加算して報酬が支払われることになっています。

 詳細については別記事がありますのでご一読ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 なお、この報酬は私たちのような資格者(司法書士・弁護士等)が後見人に就任した場合のみ認められるわけではなく、当然親族の方が後見人に就任した場合も付与されます。

 ただし、親族間で報酬を付与してもらうのは何か気が引ける、といって報酬付与を受けない方も多くいらっしゃいます。

 

 報酬を受け取らない親族後見の場合ランニングコストは掛かりませんが、ここで注意が必要です。親族が後見人に就任した場合、近年多くの場合に成年後見監督人が就任している案件が多く見受けられます。

 後見監督人とは後見人を監督する立場の者を言いますが、この場合でも報酬が年間12万円から36万円程度かかります。

まとめ

 ここまで家族民事信託の費用と成年後見制度の費用を比較してきたわけですが、よく陥りがちな落とし穴があります。それは、家族民事信託に係る初期費用は一度きりですが、成年後見人の場合は基本的にご本人が亡くなるまで続くということです。仮に、成年後見監督人の報酬が1年24万円(月額2万円)だったとしても、10年間ご本人がご健在の場合、トータル240万円必要となってきます。この様に、毎年かかるランニングコストを長期間積み重なればどんどん大きくなってしまいますね。

 

 次に、初期費用は家族民事信託の方が高くなりがちです。ただ、将来的に成年後見制度を利用しなければならなくなった場合、長い目で見ると、結局家族民事信託の方がコストパフォーマンスが良いというケースは多いので、制度の違いと長期間にかかるコストの違いを意識して、制度を選択することが非常に重要ということですね。

 

 この点から考えると、ご自身、ご家族の想いを実現することが出来、かつ長期的にみると比較的低コストで実現出来るというのであれば、近年家族民事信託を検討される方が増えているのも理解できますね。

 勿論、コストだけの観点から考えるのではなく、制度自体のメリット、デメリットを十分ご検討することや、ご自身の家庭は短期的、中長期で対策するのが望ましいか等、様々な観点から検討することが望ましいので、制度や一般的なコスト等の知識は当ブログの情報で付けた上で、いずれ組成する時期が来れば、専門的な知識を持った担当者への相談が望ましいでしょう。

 

以下、関連記事です。
 「コストの違いは分かったけど、成年後見制度と家族民事信託の制度の違いはどの様に違うの?」と思われた方はこちらの記事を合わせてご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 「家族民事信託って税金はかかるの?」とご質問を受けることがあります。家族民事信託に関わる税金について解説した記事はこちら。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 相続の場合、一番最初に思いつくのは遺言書ではないでしょうか?ただ、どんな場合でも遺言書を残した方が良いという訳ではありません。なるべく避けるべき遺言の内容についてまとめた記事はこちら。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

家族(民事)信託を活用すれば認知症後も暦年贈与は可能なのか?

f:id:munehisa0721:20190615011157j:plain

 皆さん、こんにちは。

 最近多くの種類の野菜の収穫の時期なのか、お客様からいろんな野菜をもらうことがあります。特に、玉ねぎを多くいただくことがあり、おかげで毎日玉ねぎのスライスを食べています。なんとなく血液の流れが良くなって体調がいいような気がします。ありがたいことです。

 

 さて、先日法律相談の場で次のような相談を受けましたので紹介いたします。

 「相続対策のため親から生前贈与によって金銭を受け取っているのですが、親が認知症になった場合でも家族(民事)信託を利用していれば引き続き生前贈与による金銭を受け取ることは可能なのでしょうか?」

 これはなかなか難しい相談でした。最終的には税金についての専門家である税理士に確認することを付言し、私見を交えてご説明いたします。

生前贈与が成立する要件とは?

 生前贈与は相続税対策として非常に効果的です。

理由は単純明快、贈与する方の財産を減らすことができるからです。

 ただし、そこには落とし穴がありあます。生前贈与によって財産を受け取った方(受贈者)に贈与税が課税される恐れがあります。

 しかし、暦年課税制度によると年間110万円の基礎控除を利用することができますので1年間(毎年1月1日から12月31日まで)に受け取る金額が110万円以下である場合は贈与税が課税されません。

 そして110万円を超えた場合に、その超えた金額に対して一定の割合による税金がかかるわけですね。

 この1年間に110万円という条件を満たせば、複数年の間この基礎控除内でうまく贈与を行うことによって贈与税を回避しつつ、相続対策を行うことができるのです。

生前贈与が成立する要件とは?

 では、贈与はどのような要式で成立する契約なのでしょうか。

 民法第549条には次のような規定があります。

民法第549条「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」

 

 贈与する人(贈与者)と贈与を受ける人(受贈者)の意思の合致が必要であるということですね。

 これは何を意味するのかと言うと、贈与者ないし受贈者が認知症など意思の表示ができなくなった場合は贈与できなくなるということです。

 

 では、認知症など意思の表示ができなくなった場合に利用できる成年後見制度を利用したらいいのではないでしょうか?

 そんな疑問を持たれた方もいるかもしれません。

 1.成年後見制度を利用すると生前贈与を行うことができるのか?

 残念ながら成年後見制度を利用すると生前贈与を行うことはできなくなります。

なぜなら、成年後見制度では積極的な財産管理が禁止されているからです。

 この点について詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

munehisa0721.hatenablog.jp

 2.家族(民事)信託は生前贈与を行うことができるのか?

 そこで本題ですが、家族民事信託を利用することで生前贈与を行うことができるのでしょうか。

 様々な考えがあるでしょうけれども、わたしはできないと考えています。

それは次のような理由からです。

1.受託者の忠実義務違反

 家族(民事)信託では、委託者から財産を託されている受託者は、委託者の財産を受益者以外に給付することはできません。受託者は預かっている財産を受益者の利益のために管理・処分しなければならないため、受益者以外の者に財産を給付することは受託者の忠実義務(信託法第30条)違反になります。

 

 したがって、安易に受託者の判断で受益者以外の者へ贈与を行うと、受託者は法的な責任を問われる恐れがあり、税務的にも税務当局から贈与自体を否定される可能性もあります。

 ただし、使途を限定せずに財産を給付する「贈与」はできなくても、受託者が受益者の扶養家族のために、生活費等を定期的に給付するという扶養義務に基づく財産給付は、場合によって可能と思われます。

 

 また、「受益者変更権」を行使することで、贈与に準じた生前の財産権の移動が可能になる手段もあります。

 家族(民事)信託を使えば何もかもできるわけでは有りませんが、うまく活用すると今までの常識では出来なかった様な事が出来るのも事実です。一度お近くの専門家にお尋ねください。

 

以下、関連記事です。

 実際に相続のことを考え始めた際に、相談にお越しになられた方から「成年後見と家族(民事)信託のどちらの制度が自分の家庭に合っているのか分かりにくい。」と仰られる方が多いので、こちらの制度の比較記事を参考に、ご判断の一助となれば幸いです。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 高齢化が進むにつれ、相続対策も認知症を踏まえ、対策していくことが求められてますね。今回は、近未来に需要が高まる増えそうな家族(民事)信託を活用した認知症対策を図解を交えて解説しました。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 今回は「ご兄弟に内密に家族(民事)信託を進めることは出来るのでしょうか?」というご相談です。この様な質問もよくありますので、私見も交えて解説した記事はこちらです。

munehisa0721.hatenablog.jp

家族民事信託にかかるコスト(費用)は?

f:id:munehisa0721:20190612213824j:plain

 

 皆さんこんばんは。暑くなってきましたが、皆さんは体調はいかがでしょうか。

私は最近子どもの面倒を見る機会が多いのですが、慣れてないからか、もの凄く泣かれてしまいます。

そんな場合はすぐにおかあさんにバトンタッチしています。

バトンタッチしたらすぐ泣き止むので、母は本当に偉大ですねぇ。心から感謝です!!

 

さて、家族民事信託の利用を検討されている方の中で、

 「家族民事信託が素晴らしい制度だということは分かったのですが、手続き開始にはいくらくらい費用がかかるんだろう。」

と不安にされている方が多くいらっしゃるようです。

今回はそんな皆さんが気になる家族民事信託のコストについて解説いたします。

家族民事信託にかかかるコストは?


 家族民事信託は非常にメリットの多い制度ですが相応の費用がかかります。

  信託する財産の額や財産の種類・数によって費用は大きく増減します。特に信託財産に不動産が含まれるのか含まれないのかで大きく異なってきます。

 お客様にとって家族民事信託の導入にあたっては、まず「費用の目安」を知ることが大切です。

一般的な相場は以下のとおりです。

※ 預貯金及び不動産の合計額が1000万円~1億円程度である場合を想定しています。

f:id:munehisa0721:20190613200110p:plain

上記①~⑤の合計金額が必要となります。

 こんなに費用が掛かるのか!! と驚いた方もいるのではないでしょうか。

なぜこのような費用がかかるのかを簡単に説明いたします。

① コンサルティング報酬【費用相場:信託財産の1%】

 専門家(司法書士等)に信託内容を設計してもらうコンサルティング費用です。

 当然専門家に頼って契約書を作成する必要はありませんが、非常に難解な信託契約書を作成するのは至難の業です。

 何よりも、家族民事信託は「相続対策の1つの手段」に過ぎません。相続対策には他にも遺言や生前贈与、成年後見制度の利用などの手段がある中で、本当に家族民事信託がベストチョイスであるかを検討する必要があります。

 それらについて詳しい専門家に相談することは結果的に後々の問題を未然に防ぐことができる上に、コスト面においてもいい結果になると思います。

 このコンサルティング報酬は専門家によってまちまちですが、私も会員である一般社団法人家族信託普及協会の報酬基準が目安になるかもしれません。

 一部紹介いたします。

f:id:munehisa0721:20190613200205p:plain

② 信託契約書(案)作成費用【費用相場:10万円~20万円】

 家族民事信託の内容が定まると、次にその契約書の案(遺言信託の場合は遺言書の案)を作成する必要があります。信託契約書(案)を作成するにあたっても条項などを精査する必要があり、しかもその中には難解な事項が多くあり、専門家に依頼することは必須でしょう。

 この契約書作成費用は専門家によって様々ですが【10万円~20万円】くらいではないでしょうか。

③ 公正証書作成費用【費用相場:5万円~10万円】

 公正証書作成費用とは、公証役場で公証人に公正証書を作成してもらう手数料のことです。

 信託する財産額や契約内容によって増減しますが【5万円から10万円程度】と想定しておおけばいいかと思います。

ここで注意が必要なのは、そもそも信託契約書は公正証書で作成することは必要でありませんので、公正証書によって信託契約書を作成しなければこの費用はかかりません。

 しかし、私が以前書いた記事にもあるように、公正証書で作成する方がいいです。

下記の関連記事ありますのでご覧ください。 

④ 不動産登記費用【費用相場:7万円~15万円】

 信託財産に不動産を含む場合には、不動産の名義を委託者から受託者へ変更する手続きを行わなければなりません。司法書士に依頼せずに申請書や添付書類を作成し法務局で登記申請すれば、この費用はかかりません。

 しかし、家族信託に関する登記については、他の登記に比べ難易度が高いので、申請書の準備や法務局への登記申請など、煩雑な登記手続きを司法書士へ依頼するようにしましょう。

 司法書士に依頼する費用は信託する不動産の評価額や物件数によって増減しますが【7万円~15万円程度】と想定するとよいでしょう。

⑤ 登録免許税【費用相場:固定資産税評価額の0.3~0.4%】

 法務局での名義変更手続きの際に納付しなければならない費用がこの登録免許税です。登録免許税は固定資産税評価額を基準に以下のとおり算定することになります。

土地の場合・・・固定資産税評価額の0.3%

建物の場合・・・固定資産税評価額の0.4%

 たとえば、評価額3000万円の土地を信託する場合には、9万円の登録免許税がかかります。

 まとめ

 上記のとおり、一見すると高額な費用に思いますが、他の制度(遺言・生前贈与・成年後見制度等)を利用した場合にかかる費用や家族民事信託にしか実現できないメリット等を踏まえて、総合的に比較検討することが必要です。

 専門家に相談する方はこれらについて総合的に判断できる専門家に相談するようにしましょう。

 

以下、関連記事です。

 家族民事信託と成年後見人制度のどちらを活用しようかと迷われる方も多いのではないでしょうか?成年後見人にかかるコストについて解説した記事はこちらです。合わせてご覧頂くと、比較し易いと思います。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 上記の関連記事をお読みいただくと、「あれ?これって任意後見契約と似てませんか?」とお気付きの方もいらっしゃるかもしれません。こちらの記事も合わせてどうぞ。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 上記の関連記事をお読みいただくと、「これって遺言書と似てますよね?」と質問されたこともあります。こういう質問が出るということは、相続に関して事前にかなり調べている方が増えてきている傾向なので、素晴らしいですね。そんな疑問を持たれた方は、こちらの記事も合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

成年後見人の報酬ってどれくらい支払われるの?

f:id:munehisa0721:20190608205154j:plain

 みなさんこんばんは、ここ最近忙しくてなかなか時間が取れなかったのですが、ようやくまとまって時間が取れたのでブログを大きくカスタマイズしました。

 記事が読みやすくなったと思いますので今後とも是非ご愛顧ください。

 さて、家族民事信託の話題を中心にブログを書いていますが安心した老後を実現しようと思えば遺言や贈与など他の様々な制度の利用を検討する必要があります。

そして、その中に成年後見制度があります。今回は、その成年後見制度で一番気になる「後見人の報酬」について記述します。

皆さん、

「後見人の報酬額はいくらぐらいなの?」「行う業務によって報酬額は違うの?」

 など、多くの疑問を持たれているのではないでしょうか。

 後見人への報酬はいったい誰が支払うのか

 法定後見人の報酬は、被後見人の財産の中から家庭裁判所が決定した額を後見人が自ら管理する預金通帳から引き出すことで支払われる仕組みになっています。

 ということは、被後見人のご家族のどなたかが負担して後見人に支払われるのではないということです。

 しかし、被後見人の財産の中から後見人に対して報酬が支払われるということは、結局将来的に相続人が引き継ぐ財産が減ることになります。

 将来的に相続人である自分たちが受け取る財産が減るということは、どれくらいの金額が支出されるのか、その相場が非常に気になるところですよね。

 成年後見制度の報酬体系とは?

今回は、後見人の報酬についての基本的な考え方をご説明いたします。

 早速ですが、その相場について以下に詳しく見ていきましょう。

図に表すと次のようになります。

f:id:munehisa0721:20190612211212p:plain
   上記のとおり、後見人の報酬は「基本報酬」と「付加報酬」とに分かれています。基本報酬とは、月々の日常業務に対する報酬を指し、付加報酬は特別な後見行為(例えば不動産の売却など)を行った際に発生する臨時の報酬を指します。

 後見人が普段とは違う後見業務を行った場合に報酬が増えるということですね。

 ① 後見人の基本報酬

 日常業務を行った対価として財産額に応じて毎月発生するもの(月2〜6万円)で、おおむね次のような相場となっているようです。

f:id:munehisa0721:20190612205430p:plain
   以上については成年後見、保佐、補助の類型を問わず同額となっているようです。

 付加報酬については、「②-1身上監護の特別な行為を行った場合」と、「②-2財産管理の特別な行為を行った場合」に大別されて、それぞれ家庭裁判所が金額を決定します。

 ②-1 身上監護付加報酬は基本報酬の50%が上限

 身上監護の特別な行為を行った場合というのは、例えば次のような場合です。

 ⑴ 被後見人が多数の不動産を所有しており管理が複雑である場合

 ⑵ 親族間に意見の対立などがあり、それらを調整しなければならない場合

 上記のような場合に基本報酬額の50%までの範囲で臨時的に、または定期的な報酬が発生します。

 ②-2 財産管理付加報酬の相場は数十万〜百数十万円

 財産管理を行っていく中で特別な行為を行って、被後見人の財産が増えることになった場合に付加報酬が支払われます。

 その代表的な行為の例は次のとおりです。

 ⑴ 訴訟や調停、示談などの賠償金や示談金などによって財産が増えた場合

 ⑵ 遺産分割協議によって財産が増えた場合

 ⑶ 不動産の売却や管理収入によって財産が増えた場合

 以上のような場合には、その財産が増えた金額に応じて臨時的な報酬が発生します。

相場としてはおおむね数十万円から百数十万円といったところです。

 ③ 後見監督人等の報酬(相場:月1〜3万円)

 また、親族の方が後見人になった場合でも、家庭裁判所の裁量で後見人に対する監督人が選任される場合があります。

 この場合にもやはり監督人に対して報酬が発生することになり、成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人の報酬の目安は共通して以下の通りです。

f:id:munehisa0721:20190612210228p:plain

法定後見制度の報酬は合計月3万円~9万円程度

 法定後見制度を利用した場合、後見人が被後見人の親族なのか、司法書士などの専門家であるかを問わず、後見人が「報酬付与の申立て」を家庭裁判所に行うことで被後見人の財産から支払われることになります。

 後見人の報酬は後見人が申立てを行うことによって家庭裁判所が報酬額を決定し、被後見人の財産のなかから支払われることになります。

 この申立ては任意ですので、そもそも親族の方が後見人になったような場合は、報酬の受け取り行わないケースも多くあります。

 (確かに、被後見人の面倒を見ている親族としては報酬を受け取りづらいですよね。ただし、この点については違った見方、考えがあります。別記事でご紹介します。)

任意後見制度の報酬は合計月2万円~8万円程度

 任意後見制度の場合の後見人の報酬については、法定後見の場合と違って、任意後見契約を行う両者(被後見人と後見人になる方)の話し合いによって決められます。

もちろん無報酬という選択も可能ですが、報酬を支払う契約を結んだ場合にはその通りに契約者同士で報酬のやり取りを行えばよく、法定後見の場合と違って家庭裁判所に申立てを行い審判を受ける必要はありません。

 報酬を支払う場合には、おおよその目安として法定後見制度の報酬額である月額2〜6万円ほどになります。

 ただし、後見人が専門家であるかどうかや、財産管理の複雑さなどによってあくまでも双方納得の行く金額で決定し、契約することとなります。

 

②後見監督人の報酬は月約2万円

 それから、任意後見の場合には必ず後見監督人がつけられることになるため、後見監督人に対して報酬が発生します。

 後見監督人の報酬は、被後見人の財産から支払われることになりますが、こちらは家庭裁判所への申し立てが必要で、報酬の額についても職務内容から家庭裁判所が決定します。

 おおよその目安としては、月額2万円といったところです。

まとめ

 上記をまとめると、結局法定後見・任意後見共に年額24万円〜108万円程度の負担があります。成年後見制度の利用はご本人が亡くなるまで続きますので、10年以上報酬を支払うというケースは少なくありません。仮にそうなった場合、10年累計で数百万円、時には一千万円を超える報酬がご本人からの財産から支払われるということになります。1年間の年額負担でみれば少ない金額に感じますが、累計で計算した場合は、大きな負担となる場合がある点には気を付けた方が良いですね。

 

 成年後見制度は大いに有効利用できる制度ではあるものの、将来を見据えた活用が求められます。

不安のある方は知識に明るい専門家に相談されることをお勧めします。



以下関連記事です。

 成年後見人制度を調べられている方の中から、近年「ウチの家は成年後見人制度と、家族民事信託とどちらの制度が合っているのか悩んでいる」とご相談頂く事例が増えてきました。今回ご紹介した成年後見人制度と家族民事信託をコスト面から比較される方もいらっしゃるので、こちらの記事も併せてお読み頂き、判断基準の一助となれば幸いです。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 こちらの記事をお読みになられて、「成年後見制度ってどんな仕組みなの?」と思われた方は、まずこちらの記事を合わせてお読み頂くと、よりご理解が深まります。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 成年後見を考えた際に、最近よく比較されるのが家族民事信託です。相談時にも「どのように違うのか?」と聞かれることが多かったので、回答を記事にしました。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

むしろ書かない方がいい?! なるべく避けるべき遺言の内容とは?

f:id:munehisa0721:20190603223959j:plain

 みなさんこんばんは、6月に入りかなり暑くなってきたように感じます。

特にうちの犬が舌を出して息をするようになりました。日中相当暑いんだろうな、と案じています。

 夏はもうすぐそこまで来ていますね。

 さて、少子高齢化、価値観の多様化によって家族の在り方も様々になってきました。それに伴い、遺言書を書いておく必要性が高いケースが相対的に増えてきたように感じます。

 盛んに世間でも遺言書を書いておくべきだ、言われています。

 では、どのような内容でもいいから遺しておけばいいのでしょうか。

もちろんそんなことはありません。

 逆に遺言書があることによって揉めてしまうというケースも散見されます。

今回はそのようなケースを紹介し、避けるべき遺言書の文言を紹介します。

なるべく避けるべき遺言の内容とは?

 避けるべき遺言書の文言について以下の3点が考えられます。

f:id:munehisa0721:20190603224142p:plain

1.一部の財産のみについて記載している遺言書

  一部の財産のみについて記載されている遺言書があれば揉めるケースが多いです。

 なぜなら、遺言書に記載されていない財産は原則通り遺産分割となりますので、このような場合、そもそも遺言書の内容に納得がいかない相続人がいれば、遺産分割協議が紛糾する可能性が高まるからです。特別な理由がない限り、やはり遺言書は全ての財産について記載すべきです。

 なお、仮に一部の財産についてのみ記載した場合、「その余の財産については全て甲野太郎に相続させる。」など包括条項を定めておくと良いでしょう。

f:id:munehisa0721:20190607181516p:plain

 

2.相続分の割合を指定する遺言書

  相続分の割合を指定する遺言書とは、例えば、「妻に2分の1、長男に4分の1、長女に4分の1を相続させる」というような内容のものを指します。

 このように割合のみを指定すると、具体的にいったい何を割合に応じて相続すべきなのかが分からず、結局相続人間で具体的に割合に応じて財産の分け方を決めることになります。これでは、いったい誰が何をその割合に応じて相続するのかを決定する過程で揉める可能性が出てきてしまいます。

f:id:munehisa0721:20190607222834p:plain

3.不動産を共有とする内容の遺言書

  不動産を相続する際に共有とする内容の遺言書を書いた場合も揉める可能性が高いです。管理、処分する際に足並みを揃えることが必要になりますので、管理方法や売却代金などで揉めてしまうことが高まってしまいます。

 やはり、不動産は原則的には単独で相続するべきです。

f:id:munehisa0721:20190607183706p:plain

 

以下、関連記事です。

  相続相談会で「この様な場合は、遺言書を作成されることをお勧め致します。」とお答えしている事例をまとめました。将来、遺言書をお考えの方、又は興味がある方はこちらの記事を合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 上記の関連記事のパート2です。将来、遺言書をお考えの方、又は興味がある方はこちらの記事も合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 遺言書は、ご高齢になった方でも自筆で記載することが要件となっていましたが、今回の民法改正により大きく変わりました。民法改正によってどの様に変わったのか記載した記事はこちらです。

munehisa0721.hatenablog.jp

遺言⇨家族信託の順番で内容が重複した場合の取り扱いは?

f:id:munehisa0721:20190602132508j:plain

遺言⇨家族信託の順番で内容が重複した場合の取り扱いについて

先日お客様からの相談をここで紹介いたします。

 「以前、財産の全部を長男に相続させる旨の遺言を書いたのですが、今回、そのうちの一部の財産を長女に信託することになりました。当初の遺言と内容が重複することになるのですが、このような場合どちらが優先されることになるのですか。 」

 上記の相談のように遺言書と家族信託の両方を利用する場合は実務でも結構あります。では、今回のようにその内容が重複してしまった場合、遺言書と家族信託はどのような取り扱いになるのでしょうか。

f:id:munehisa0721:20190907113629p:plain

 上図のような場合、遺言のとおり自宅が長男に相続されることが優先されるのか、それとも後に行った信託契約が優先されて自宅が長女に信託されるようになるのでしょうか。

 遺言書作成⇨遺言による信託の場合

 この場合の結論を申しますと、遺言書作成の後に行われたのが遺言による信託の場合、当初の遺言が撤回されたこととみなされます。民法1023条第1号)

 つまり長男に対する遺言が撤回されて、長女に対する家族信託が有効である、ということです。

 遺言書作成⇨契約による信託の場合

 また、遺言の後に行われたのが契約による信託であった場合、信託契約が「遺言後の生前処分その他の法律行為」に該当することとなるため、当初の長男への遺言は撤回されたこととみなされます。民法第1023条第2号)

 こちらの場合についても長男に対する遺言が撤回されて、長女に対する家族信託が効力を有するということです。

まとめ

 遺言が行われた後に内容が重複する信託が行われた場合、それが遺言による信託なのか、それとも契約による信託なのかに違いはなくいずれも家族信託が優先されるということです。

 このケースと比較になるのですが、家族信託を締結したのちに遺言をした場合はどうなるのでしょうか。

 このケースについては結論が異なることになりますので注意が必要です。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 財産を安心して承継するにあたり家族信託、遺言、贈与など様々な方法を検討することになりますが、その際多くの方法を併用することもあります。

 法的にどのような効果を生むのかをしっかりと理解しておかないといけないですね。

以下、関連記事です。

 遺言書をいつか書こうと思われている方は、まず遺言書のメリット、デメリットを把握されることをお勧めしてます。こちらの記事をまずはご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 二次相続のフレーズを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。遺言書を書く場合にご自身の意思通り相続しようとすると二次相続になる場合が有ります。今回は、相談者の事例を交えて二次相続でもご自身の思いを実現させる方法について解説しました。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 「私は財産が少ないから、相続対策なんて必要ないよ。」と思われる方が多いでしょうが、実は相続が争続になった事例は5000万円以下が75%なんです。こちらの記事をご自身の家族関係に当てはめながらお読み頂ければ、相続の際にお役に立つかもしれません。

munehisa0721.hatenablog.jp

家族民事信託が必要とされる3つの理由とは?その2

f:id:munehisa0721:20190531181834j:plain

 みなさんこんばんは、暑苦しい日が続いていますがみなさんは体調は如何ですか?

実は、先日私の知人がインフルエンザを患ったようです。(しかも2人...!!)

 今、私に移ると非常に厄介なのでうがい手洗いをしっかり行っています。

と言いつつも、このブログを書いている今少し熱っぽいです。早く休みます。。

 

 さて、家族民事信託でしか解決できない問題点についてブログに記載しましたが、今回もその問題点について違った視点で指摘したいと思います。

 おさらいになりますが、家族民事信託でしか解決できない主なメリットとして以下の3点があります。

f:id:munehisa0721:20190526215308p:plain

 今回は「2.資産の承継についてのメリット」という点を解説いたします。

資産の承継についてのメリットとは?

 もし、あなたが遺産を法定相続によってではなく、特定の相続人に引き継がせたいと想った場合どのような方法を思いつくでしょうか。

 まず初めに、皆さんは「遺言書」を書く方法による承継を想像されたのではないでしょうか。

  そうですよね、遺言書を書くことによって、引き継がせたい相続人に財産を引継がせることができます。(ただし、遺留分減殺請求について考慮しない場合。)

遺言書の場合の二次相続の可否とは?

 では、財産を引き継がせた相続人が亡くなった後、次にその財産を引き継ぐ者を指定したい場合(2回目の承継)はどうでしょうか。

 このように2回相続が生じることを二次相続と言いますが、2回目の承継先を指定したいというニーズは結構あります。

 例えば、先祖代々引き継いている不動産を今後も安定的に将来に遺すような場合がそれと言えます。いわゆるあと継ぎ遺贈の問題です。

f:id:munehisa0721:20190531190435p:plain

 上記の例のようなことが遺言書で実現できるのでしょうか。

 

結論から申しますと、二次相続については遺言で定めることはできません。

 なぜなら、1回目の相続発生の時点で相続人(B)は確定的に所有権を取得しているからです。

民法第206条にはこのように記載されています。

民法第206条 

 「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」

 

 つまり、一旦所有権を取得すればその権利はその者(今回の事例であればB)が自由に使用、収益、処分できるのであって他の者から指示を受ける筋合いはないのです。 

 家族民事信託の場合の二次承継の可否とは?

 一方、家族民事信託を利用すると、第一次の承継者の受益者を当該承継者の死亡で消滅させて、新たに第二次の承継者に受益権を与えることで、当初の資産所有者が考えた資産承継をさせることができます。

 つまり、家族民事信託を利用すると遺言書では実現できなかった、二次承継が可能なのです。

f:id:munehisa0721:20190531190907p:plain

 

 このように二次承継が可能であれば、跡継ぎ問題に限らず、様々な場面で威力を発揮します。

例えば、次のような財産の承継を実現することができるようになりますよ。

 気になる方はご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 上記のような事例はほんの一例です。

 このような要望は多く、これからますます家族民事信託が利用される機会が増えてくるのではないでしょうか。

 今すぐ問題に直面しているわけではないけれども、将来問題が生じる恐れのある方は早めに専門家に相談されることをお勧めいたします。




以下、関連記事です。

 家族民事信託でしか出来ないこととして紹介した『資産の承継』以外にも家族民事信託しか出来ない点は『資産の管理』。近年、注目を集める家族民事信託しか出来ない『資産の管理』について解説した記事も合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 資産を承継するお子さんに障害があった場合、信託目録に記載される可能性があるという事実を知って相談された事例の解決策をこちらの記事で解説しました。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 突然、父親から「財産の受託者をお前に任せたいんだが。」と言われた方からの相談事例です。今まで財産管理したことがない方が、いきなり財産を管理する人に指定されたら驚きますよね。そこで、まずは知っておきたい財産管理の基礎知識についてこちらの記事でまとめました。合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

家族民事信託が必要とされる3つの理由とは?その1

f:id:munehisa0721:20190524223803j:plain

 みなさんこんばんは、先日久しぶりに甥っ子の子守をしましたが、なかなかの生意気小僧になっていました。本当に成長が早いものですね。

 

 さて、家族民事信託の利用が全国的に進んできているようですが、なぜ注目されているのかここで改めて解説いたします。

ズバリ家族民事信託を利用しなければ解決できない問題があるからです。 

家族民事信託を利用する3つのメリットとは?

 家族民事信託を利用するメリットとして以下の3点が考えられます。

f:id:munehisa0721:20190524224028p:plain

  今回は「1.資産の管理についてのメリット」という点を解説いたします。

資産の管理についてのメリットとは?

 近年、少子高齢化がさらに進行して、高齢者の財産の管理方法が問題となっています。

認知症になると不動産を売買したり賃貸することができなくなる。」

認知症になると預金を引き出したり定期預金を解約することができなくなる。」

認知症になると老人ホームへ入所する際の契約ができない。」

 

  皆さんは上記のような話を聞いたことはありませんか?

すべて本当の話です!!

 しかも下図のようにどんどんと高齢化が進んでいます。

f:id:munehisa0721:20190524224319g:plain

内閣府 :平成30年版高齢社会白書(全体版)引用

 

 これまではこのような場合、認知症高齢者の財産の管理においては、従来から成年後見制度などを利用していました。

 しかしながら、成年後見制度の趣旨からすると「本人の保護が優先」されることになります。

 そのため、相続税負担軽減対策のための近親者への贈与や株式投資などの積極的な資産運用はできませんし、また賃貸マンションなどの大規模改修なども制限される可能性があるのです。

 

 一方、家族民事信託の場合、受託者(=財産を預かる人)に一定の方向性で財産管理を任せることができます。委託者(=財産を預ける人)が元気なときにしっかりと財産の管理方法を指示しておくことで、仮に委託者(=財産を預ける人)が意思決定できなくなっても積極的に財産管理が可能になります。

  このように資産管理の柔軟性という観点から家族民事信託が注目を浴びているのです。

 なお、家族民事信託を成年後見制度と比較しながら、より詳しい解説を別記事で記載していますのでご興味のある方はご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 家族民事信託で実現できて、成年後見制度では不可能である場面は案外多くあり、これからその要望はますます多くなることが予想されます。

家族民事信託を利用する機会が増える時代がすぐそこまで来ています

 

 以下、関連記事です。

 家族民事信託を活用するか、それとも成年後見制度を活用するかで迷われる方が一番多いのではないでしょうか?まず、成年後見制度と家族民事信託の違いと仕組みを知ることが第一です。成年後見制度ってなんだったっけ?または、再度確認したい方はこちらの記事をどうぞ。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 家族民事信託の必要性は分かったけど、私の家族で本当に必要かどうか分からないから、家族民事信託をもっと知りたいと思われた方はこちらの記事を合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 家族民事信託の受託者は財産管理する必要性があります。「財産管理ってどんなことをしないといけないの?」と思われた方は、こちらの記事を合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

必読!!遺言書を作成しておく必要性の高い事例 パート2

 f:id:munehisa0721:20190520215837j:plain

 みなさんこんばんは、先日久々に野球の大会がありました。

1試合のみの出場でしたが次の日身体が筋肉痛で辛かったです。

やはり定期的に運動はしないといけないですね、昔のようにはいかないですね。

 

 さて、以前トラブル防止のためにも遺言書を作成しておいた方がいいケースということで以下の6つのケースを紹介させていただきました。

f:id:munehisa0721:20190520200633p:plain

 そのうち①~③のケースについては既出のブログに詳細を記載しました。

 

munehisa0721.hatenablog.jp

④~⑥のケースについて解説いたします。

④ 財産を承継させたい者に相続する権利がないケース

 被相続人に内縁の妻がいる場合、内縁の妻への相続権はありません。(下図①)また、亡くなった長男の嫁に財産を承継させたいような場合にも相続権はありません。(下図②)このようなケースは遺言書を作成しておく必要性が高いですね。

f:id:munehisa0721:20190524232416p:plain

⑤ 相続人間の関係が良くないケース

 例えば、離婚した先妻との間に子どもがおり、後妻がいるような場合その関係が良好でないことが多いです。このような場合、遺言書を作成しておらず遺産分割協議を行うとなれば協議が困難となるケースが多く、この場合も遺言書を作成しておく必要性が高いです。

f:id:munehisa0721:20190524233926p:plain

⑥ 相続人の中に行方不明者がいるケース

 相続人の中に行方不明者がいる場合、遺言書を作成しておく必要性が高いです。なぜなら、相続人の中に行方不明者がいる場合に遺産分割協議を行う際、不在者財産管理人を選任する必要があり、多分な費用と時間を要することになります。

f:id:munehisa0721:20190524235112p:plain

 家族の在り方が多様化している現代社会において、各家庭の状況も様々であり、上記の④~⑥のようなケースも少なくはないと思います。

 自分には遺言書なんて関係ないと考えている方も是非ご家族で話あってみてはいかがでしょうか。

 

以下、関連記事です。

 遺言書にも種類があることをご存知でしょうか?遺言書を検討されている方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 現時点では、入籍していない方への相続は認められていませんよね。今後は多様性の社会となってくるので、そのような事例も増えてくると思います。今回は、未婚の交際相手に対して財産を引き継ぐ事例を解説しました。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 相続人には最低限保証された権利の遺留分が有ります。相続の際に、争族に発展する場合もある遺留分について解説した記事はこちら。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

必読!!遺言書を作成しておく必要性の高い事例 パート1

 f:id:munehisa0721:20190520200555j:plain
 みなさんこんばんは、最近日が明けるのが早いので朝が早くなってきました。

夏はもうすぐそこまで来ていますね。

適度に水分補給をして熱中症には気を付けないといけませんね。

 

さて、先日お客様からの相談をここで紹介いたします。

「遺言書を作成しておいた方が残された遺族にとって争族となる危険性が低いので推奨するということを新聞で見たのですが、その中でも特に遺言書を作成しておいた方がいいケースはというのはあるのですか? 」

 確かに遺言書を書かずにいるより、きちんと遺言書を遺しておくことで争いを未然に防ぐことができ効果的です。

 今回はその中でも特に遺言書を作成しておいた方がいいケースを紹介します。

 遺言書を作成しておいた方がいいケース

 主なもので以下の6点が代表的です。

f:id:munehisa0721:20190520200633p:plain

 今回は①~③について解説し、別回で④~⑥について解説することとします。

① 遺産が不動産のみで、現預金が無いケース

 遺産が不動産のみの場合、法定相続分の割合に応じて分割すると不動産は共有状態になります。共有状態となると不動産を売却するなど処分する場合に全員の承諾が必要になります。1人でも反対の意見を持つものがいれば不動産の処分はできません。

f:id:munehisa0721:20190520205427p:plain

 上記のような問題を避けるため、1人で不動産を相続しようとするような場合、預貯金があれば他の相続人には相当額の財産を渡して解決することができますが、預貯金が無い場合は解決をすることはできません。

 かといって、遺産分割がなされずにこのまま放置されることとなり、さらに相続が発生するようなことがあれば、問題が深刻化します。

 このように遺産が不動産のみである場合は争族となるケースが多いようです。

② 法定相続人が不在であるケース  

 法定相続人がいないようなケースも遺言は必須と言えるでしょう。法定相続人が不在ということは配偶者、子ども、親などの尊属、兄弟が不在であるようなケースです。このようなケースで遺言が無ければ相続財産管理人を選任しなければならず、多分な費用と時間を要すことになります。

f:id:munehisa0721:20190520205923p:plain

③ 夫婦に子どもがいないケース

 夫婦に子どもがいないケースも遺言が必要となるでしょう。相続権を有する第一順位である子どもがいない場合、相続人は第二順位の親(尊属)、親が亡くなっている場合は第三順位の兄弟姉妹が相続人になります。親族間での交流が無い場合、遺産分割協議の成立は難航しているケースが多いです。

f:id:munehisa0721:20190520210739p:plain

 上記①~③は無いようでよくあるケースだと思います。自分には遺言書なんて関係ないと考えている方も是非ご家族で話あってみてはいかがでしょうか。

 

以下、関連記事です。

遺言書が必要だと思われたら、まずこちらの記事を合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 相続の場合、自宅の相続が悩ましい方は多いのではないでしょうか?自宅を相続される可能性がある方は、まずメリットとデメリットを把握されて計画されることをお勧めします。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 相談会でご希望を伺うと、二次相続に当たる場合が多いです。遺言書を検討されている方は、こちらの記事も合わせてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

「特別受益(とくべつじゅえき)の持ち戻し免除の意思表示推定」

f:id:munehisa0721:20190517174106j:plain

 みなさんこんにちは、5月になり随分と暖かくなってきましたね。

少し暑い日もあるくらいです。

 それに伴って花粉も随分飛んでいるようで、花粉症の僕にとってかなり辛い時期です。

 

 さて、ここ数回にわたって民法の改正についてを取り上げてきましたが、改正ポイントはまだ多くあります。

今日はそんな改正ポイントの中の、「遺産分割」についての見直し点を説明いたします。

「遺産分割」についての改正ポイントは2点あります。

特別受益(とくべつじゅえき)の持ち戻し免除の意思表示推定

遺産分割前における預貯金の仮払い制度

 今回は遺産分割に関する改正点のうち、特別受益(とくべつじゅえき)の持ち戻し免除の意思表示推定」という点について解説します。

 

 そもそも特別受益とはいったい何なんでしょうか。

以前記事を書いていますのでそちらを参照ください。

munehisa0721.hatenablog.jp

特別受益(とくべつじゅえき)の持ち戻し免除の意思表示推定」とは?

 改正民法では、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対してその居住建物又はその敷地について遺贈又は贈与をした場合、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について「特別受益の持ち戻し」の規定を適用しない旨の意思表示をしたものと推定される。という規定が設けられました。

 

...一体どういうことなんでしょうか、なんだか意味が分かりませんよね。

 例を挙げて説明いたします。

 

f:id:munehisa0721:20190517174157p:plain

夫(84歳)が死亡して相続が発生しました。(夫婦の結婚生活は20年以上)

 相続人は妻(83歳)と子ども2人(長男・長女)で、相続財産は預金2000万円ですが、実は生前に夫が妻の今後の生活を案じて居住用の土地建物(評価額1000万円)を妻に生前贈与していたというケースを考えてみましょう。

 

 原則通り、妻への贈与が特別受益とされた場合、各相続人が相続する財産としては、妻500万円、長男750万円、長女750万円となります。

 このケースだと確かに妻は居住用の不動産は確保できるのですが、預金は相続することができませんね。

こうなると老後が心配ですよね。

このようなケースを想定して、民法が改正されました。

 

 つまり、結婚20年以上の夫婦の一方に居住用の不動産を贈与した場合は、特別受益によって持ち戻しを原則しないでいい、としたのです。

 

 これによって計算すると、不動産を相続財産として持ち戻さなくていいので、結局2000万円の預金を妻も相続することができるのでそれぞれの持分は妻1000万円、長男500万円、長女500万円となります。

 残された妻の老後について考えるとある意味こちらの方が理にかなっているかもしれませんね。

 

以下、関連記事です。

 今回ご紹介した記事の他にも、民法改正により「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」が認められることになりました。詳しくはこちらの記事で解説しましたので、合せてお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 相続って、各家庭によって家族構成が違いますし、誰が相続人?どのような割合で相続するのか?非常に分かりづらいですよね。そんな、家族構成により変わる相続を図解を交えて解説しました。相続は分かりにくいなと感じてらっしゃる方は、こちらの記事を参考にご自身のご家族に照らし合わせてみてください。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 よく質問される「信託と成年後見制度って何が違うの?」について、成年後見制度について解説した記事はこちら。まずは、正しい知識を付けて、皆さんのご家庭にとって最適な方法を考えるきっかけとなれば幸いです。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 

家族(民事)信託を利用中、委託者(=財産を預ける人)が途中で亡くなった場合はどうなるの?

f:id:munehisa0721:20190513192452j:plain

 みなさんこんにちは、ゴールデンウィークはどのようにお過ごしでしたか。

わたしはどこにも行かずに家族団らんをする毎日でした。

このような過ごし方も落ち着いていいものですね。

 

 さて、先日ある依頼者から次のような相談を受けました。

相談者A(72歳)

 「私(相談者A)が亡くなったあとは、妻Bの平穏な生活を確保し、妻Bが亡くなったあとは、子供Cに信託財産を承継させるという内容の家族民事信託を利用しているのですが、私(A)が亡くなった場合、家族民事信託は終了するのでしょうか、心配です。 」

f:id:munehisa0721:20190513194441p:plain

 相談者Aの不安はよく分かります。委託者(=財産を預ける人)が亡くなった場合に家族民事信託が終了するとなると妻Bの平穏な生活が確保されるのかどうか分からなくなってしまいます。

今回はそのような不安にお答えいたします。

委託者の死亡で家族民事信託は終了するの?

 結論から申し上げますと、委託者(相談者A)が死亡しただけでは家族民事信託は終了しません。もちろん、家族民事信託の終了事由を「委託者(A)の死亡」と定めると終了することになりますのでその点は注意が必要です。

 家族民事信託が委任契約や成年後見制度と決定的に違うのはこの点です。相談者Aが死亡しても信託した財産は相続財産とはならず、家族民事信託のスキームの中で運用することができます。

f:id:munehisa0721:20190513194321p:plain

 もちろん、家族民事信託のスキームの中に含めなかった財産(現預金、不動産、株式等)は、原則通り民法の相続の手続きによって相続人に承継されることになります。

家族民事信託と民法の相続の両方の制度をうまく利用しながら各家庭に合った財産の承継を実現しましょう。



以下、関連記事です。

 各家庭によって家族構成が違い、誰が相続人となり、どのような割合で相続するのか分かり辛いですよね。相続の基礎を抑えて、まずはご自身のご家庭の状況と照らし合わせてみましょう。相続の基礎を解説した記事はこちら。

munehisa0721.hatenablog.jp

 今まで遺言は自筆証書遺言でなければ、効果が認められていませんでした。ただ、今回の民法改正により、自筆証書遺言の規定が変わったことをご存知でしょうか?大幅に変更されましたので、変更点を分かりやすく解説した記事です。

munehisa0721.hatenablog.jp

 質問で一番多いのは、「家族民事信託と成年後見制度って何が違うんですか?私はどちらを選んだ方が良いんでしょうか?」等です。その悩みを解決する為にも、まずは成年後見制度の仕組みを理解頂きたいので、こちらの記事をお読みください。

munehisa0721.hatenablog.jp

家族(民事)信託を利用中、受益者が2名以上いる場合の意思決定はどのようにするの??

f:id:munehisa0721:20190510185604j:plain


 みなさんこんばんは、あっという間に令和の時代ですね。時間が経つのはほんとうに早いものです。

 一日一日を大切にしたいですね。

 

 さて、家族民事信託を進めていく中で、利益を享受する受益者が複数となるケースがあります。

 以前、次のような質問を受けたことがあります。

 

相談者・23歳男性

「わたしは父の財産を受託者として預かり管理していますが、その管理について受益の意思決定に従うと聞きました。ただ、今回その受益者が2人いるわけですがどのようにして意思決定に従えばいいのでしょうか。 」

 

f:id:munehisa0721:20190510190218p:plain

 受益者が複数いる場合の意思決定の方法とは?

  たしかに、受益者が複数いる場合の意思決定はどのようにするのか分からないですよね。

 受益権(家賃収入など)についてはその各人が有する利益の割合によって異なるような場合、その持分の割合によって意思決定するのでしょうか、それとも全員一致での意思決定をしないといけないのでしょうか。

 

実は、基本的に受益者が複数いる場合、その意思決定は全員の合意を原則とします。

 

 ただ、全員一致での意思表示が原則ということは一見理に適っているように思いますが、受益者が大勢いるような場合は全員一致が難しいケースもありますよね。

 そこで、信託法は信託契約等で別段の定めをすることが可能としています。(受託者等の責任の免除の場合を除く)(法105条第1項)

 

 例えば、受益者が多数となるような信託の場合、多数決としたり、また、書面による意思決定を行って一定期間に返事がないようであれば賛成したものとみなす、など柔軟な意思決定を行うことができるのです。

 

 任意の規定を設けるのであれば受益者の人数、また人間関係など様々な要因を想定しておく必要があるということですね。



以下、関連記事です。

 「家族信託を活用した場合、固定資産税は誰に請求されるの?」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。その疑問に答えた記事はこちら。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 家族民事信託を利用する際に、有効期限が決まっているのはご存知でしたか?有効期限の計算方法も分かりやすく解説しました。

munehisa0721.hatenablog.jp 

 はじめて信託口口座を開設する場合、どの様な点に気を付けて開設した方が良いのか分かり難いですよね。信託口口座を開設する前にご一読頂きたい記事はこちら。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 

相続が生じた際によく聞く特別受益(とくべつじゅえき)とはいったい何?

 

f:id:munehisa0721:20190506193551j:plain

 皆さんこんばんは、とうとう10連休が終わりましたね。

明日からまた頑張っていかなければなりません。

 引き続きブログの更新も続けてまいりますのでよろしくお願いします。

原則となる法定相続とは?

 相続が起こったとき、相続人が法定相続分に応じて財産を取得するのが原則です。相続人は誰なのか、法定相続分の割合とは?

 気になる方はこれらについて下記記事に詳細に記載していますので併せてどうぞ。

munehisa0721.hatenablog.jp

特別受益とは?

 相続が発生した場面では、特別受益(とくべつじゅえき)が問題になることが多くあります。

 そもそも特別受益とはいったい何でしょうか。一言で言うと、被相続人(亡くなった方)から特別に利益を得た相続人がいた場合のその受けた利益」のことをいいます。

 

 相続人の中に、被相続人(亡くなった方)から高額な生前贈与を受けるなど、特別に利益を得た人がいる場合にまで単純に法定相続分に従って遺産分割をすると、むしろ不公平になるケースがあります。

 たとえば、以下のようなケースを考えてみます。

父が3000万円を遺して相続が発生し、その相続人が子ども3人である場合です。この場合、それぞれの相続分は1000万円となります。

f:id:munehisa0721:20190506194608p:plain

 しかし、実は父が亡くなる直前、長男に900万円を贈与していました。そうであれば、父の相続財産は本来3900万円あることになり、次男や長女はもっと多くの財産を相続することができるはずでした。

f:id:munehisa0721:20190506194644p:plain


これでは次男と長女は納得がいかないですよね。

 そこで、民法では、このような特別受益がある相続人の遺産取得分を減らすことにより、各相続人間の公平を図ることになっています。

特別受益があった場合の相続の算定方法とは?

では、特別受益があった場合どのように計算するのでしょうか。

 特定の相続人に特別受益がある場合、まずは特別受益分の評価をします。今回は900万円ということになりますね。

 そして、遺産の総額(3000万円)にその特別受益(900万円)を足します。この「遺産総額+特別受益分」のことをみなし相続財産と言います。今回のケースだと3900万円ということになります。

 そして、みなし相続財産(3900万円)を、法定相続分に応じて割り算します。このとき、受益者の取得分からは、特別受益分(900万円)を差し引きます。そうすると、各自の取り分が計算できます。

以上の計算によって、このケースでは 長男が400万円、次男が1300万円、長女が1300万円の遺産をそれぞれが取得することになります。

f:id:munehisa0721:20190506194741p:plain

 このように遺産にいったん特別受益の評価分を足して、そこからあらためて法定相続分に従って遺産を分ける計算方法のことを特別受益の持ち戻し」と言います。

 このように、特別受益の持ち戻し計算によって、次男と長女の特別受益分が正当に評価されて、公平に遺産分割ができるようになっていることが分かりますね。

 特別受益については、それが認められる場合や評価方法について難しい問題があるので、相続人らが自分達で話し合ってもうまく解決することができないケースが多いように思います。

 

 そこで、寄与分特別受益が問題になる場合は、専門家に相談することをお勧めいたします。

 

以下、関連記事です。

「子や孫に安心して財産を引き継げたらいいなぁ。」と思われる方は多いのではないでしょうか。そんな時にすぐ思い浮かぶのは遺言書ですよね。でも、遺言書には種類があることをご存知でしょうか。まず、ご自身に最適な遺言書を知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 既に家族民事信託を活用された方からの「私が亡くなった後に委託者の地位も相続されてしまうの?」というご相談内容について解説した記事はこちら。

munehisa0721.hatenablog.jp

 

 最近、増えてきている相談内容は「長期間、献身的に親の介護をした私に、親の介護を全くしなかった兄が突然相続分を要求してきました。ずっと介護は私がやってきたので、納得がいかないのですがどうすればいいのでしょうか?」等のご質問です。そちらについて解説した記事はこちらです。

munehisa0721.hatenablog.jp