家族信託における信託財産責任負担債務とは何か?
家族信託を組成していると多くのケースで聞かれることがあります。
それは、「家族信託をしている途中で損害が出た場合、誰がその責任を取るのですか?」という点です。
例えば、不動産であれば家族信託をすると委託者から受託者に名義が変わりますが、この場合はその責任の所在が分かりづらいですよね。
このように「受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務」(信託法2条9項)のことを信託財産責任負担債務といいます。
信託財産責任負担債務とは?
いきなり信託財産責任負担債務といっても分かりづらいですよね。
簡単に説明しますね。
委託者の有する財産を信託財産に組み入れると、それ以降、当該財産は信託財産として受託者に帰属することになります。
ただし、それは受託者が信託財産を管理・処分するために形式的に受託者の所有になっているにすぎません。信託財産は受益者のために管理・処分されるものなので、信託財産の経済的な価値は受益者のものなのです。
つまり、信託をすることで受託者は「信託財産」と「(受託者)固有の財産」の2つの財産を持つことになるのですね。
詳しくは「 家族信託における受託者の信託財産の分別管理の重要性」をご覧ください。
信託財産は実質的には受益者のために存在する財産なので、受託者が個人的に負っている債務の債権者が、信託財産は受託者に帰属しているからと言って信託財産に属する財産に対して強制執行等をすることはできません。
そういった受託者の信託とは関係ない債務は受託者の固有財産から弁済をしなければいけません。
一方、受託者が信託事務を執行する中で負った信託財産責任負担債務は、信託財産に属する財産をもって弁済を履行する必要があります。しかし、当該債務は同時に受託者の債務でもあるので、受託者は一旦固有財産から弁済をしたのち、信託財産から償還を受けることもできます。
つまり、信託財産責任負担債務の債権者は、信託財産のみならず受託者固有の財産に対しても債務の履行を求めることができます(信託法21条2項による例外あり。)。
まとめ
受託者が信託とは無関係に負担した個人的な債務は受託者の固有財産から弁済を受けることができます。
信託財産責任負担債務は信託財産に属する財産から弁済を受けるか若しくは受託者の固有財産から弁済して、信託財産から償還を受けることができます。(信託法21条2項よる例外あり。)
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