お子さんに障がいがある方から相談される「当初受益者」の秘匿方法とは?
みなさんこんにちは、9月に入り随分と過ごしやすくなってきましたね。
先日家族と一緒にお月見をしながら団らんしましたが、たまには虫の音を聞きながら過ごすのも気持ちがいいものですね。
さて、家族民事信託を組成するにあたって、やはり不動産を信託するケースというのが一番多くなっています。
その場合、不動産の登記をすることが重要なポイントとなってきますが、以前、次のような相談を受けたことがあります。
相談者・83歳
「私の子は障がいをもっています。その子の将来のために信託をしたいのですが、気になっていることがあります。信託の登記をすると、法務局で信託目録というものが作成されるとお聞きしました。信託目録は不動産登記簿と一緒に法務局で公開されるとのことですが、私たちは当初受益者の公開を希望しません。障がいがあることが他の方に知られたくないからです。知られることのないようにできませんか。 」
家族民事信託を設定するにあたって、不動産があれば信託の登記をしなければなりません。
そこで問題になるのが、不動産の登記と同時に作成される信託目録の記載内容についてです。
ご相談頂いた今回のようなケースは多々あるのではないかと思います。
信託を組成するとき、必ず信託の目的を定めて、そしてそれは信託目録にも記載されます。
そこから受益者(財産をもらう方)が障がいをもっているということが分かる可能性があります。
この事例では、親族の心情を察すると受益者を秘匿したいと考えるのは、当然ですしまたプライバシー保護の観点からも重要だと思います。
「当初受益者」を秘匿する方法とは?
では、受益者を秘匿する方法はあるのでしょうか。
信託目録には受益者の氏名又は名称及び住所が記載されることになっていますので、一見受益者を秘匿することはできないのではないかと思われるかもしれません。
しかし、受益者代理人が付されている場合は、その者の表示をもって替えることができるとされています。
この規定を利用すると受益者を秘匿して登記することができます。
わたしは登記は正確に正しくされるべきだという考えを基本としていますが、信託では全てをさらけ出すことは必ずしも正しいとは考えていません。
やはり、依頼者のニーズに沿った形を実現していくことが必要ですね。
依頼者の実現したい事項はしっかり実現しつつ、秘匿したいことはしっかり守る、これを徹底していかなくてはなりません。
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