ここだけは知っておきたい『遺言書の落とし穴』とは?
みなさんこんにちは、また暑い日が戻ってきましたね。
これだけ暑い日が続くといろいろとだらけてしまいがちです。
わたしも早起きして、過ごしやすい時に活動するなど工夫をしていますが、それでも辛いものですね。
さて、これまで家族(民事)信託に関連する講演をいくつか実施してきましたが、その中でいただいた質問をご紹介します。
「遺言書を作成しておけば安心だ、ということをあちこちで耳にするのですが、それは本当ですか?どこかで注意すべき点はないのですか? 」
というご相談でした。
確かに、遺言書を作っておけば安心だ、ということを聞くことが多くあると思います。
今日は、そんな遺言書の落とし穴はないのか、という視点から遺言書について深く解説したいと思います。
遺言書の欠点とは?
① 遺言書はいつでも書き換えが可能です。
② 自筆証書遺言は不利益を受ける者などが隠したり、破棄したりされる危険があり ます。
③ 遺言書作成者の意思能力の欠如の可能性があります。
④ 相続人全員が合意すれば、遺言書とは違った承継方法にすることが可能です。
遺言書の欠点についての理由とは?
① 遺言書はいつでも書き換えが可能です。
遺言書は何通でも作成することが可能です。ではその遺言書はどれが有効なのでしょうか。それは、あとに作成したものが有効なのです。つまり、死期に近い遺言書がもっとも本人の意思に沿っているだろう、という趣旨です。
そのため、判断能力の衰えに付け込む相続人により、意図的に書き換えさせられるということがあります。
② 自筆証書遺言は不利益を受ける者などが隠したり、破棄したりされる危険があります。
自筆証書はあくまで本人が保管することになります。よって、何らかのきっかけでその遺言書の存在が明らかになる場合があります。
③ 遺言書作成者の意思能力の欠如の可能性があります。
もちろん遺言書を作成するには本人の自由な判断の下で、したためるというのが基本です。
しかし、①にも関連しますが、本人の意思能力が低下していた場合、本当に遺言書の内容が本人の意思に基づいているのか、という点が問題になります。
④ 相続人全員が合意すれば、遺言書とは違った承継方法にすることが可能です。
相続人全員の合意があればたとえ遺言書があった場合でも違った承継方法とすることが可能です。
よって、遺言書を残す本人の意図した財産の承継が実現できるとは限らないのです。
上記に記載してある通り、遺言書を遺しておけば絶対安心というわけではありません。
わたしがもっとも重要であると考えているのは、「遺す側」と「遺される側」の普段からのコミュニケーションではないかと考えています。
相続や遺言などの話題は話づらいものですが、積極的に話をされることをおすすめいたします。
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