家族信託の受益者(利益を受ける人)になれる要件や資格はあるのか?
重度の知的障がいの子や認知症の方がいる家族のための家族信託の利用
先日、ある男性から悩みがあるということでご相談に乗ることがありました。
相談者A(76歳)
「わたしの子どもは重度の知的障害があります。この子も家族信託の受益者(利益を受ける人)となることはできますか?また、わたしの妻(78歳)も最近認知症の症状が出始めました。認知症になった妻にも家族民事信託の受益者になれますか?」
とのことでした。
確かに、重度の障がいをもつ子どもや認知症の家族がいる場合、相談者Aの方のような不安がつきませんよね。家族信託を利用して、それらハンデを負っている方をサポートしたいという気持ちはよくわかります。
では、果たして受益者(利益を受ける人)は意思表示をすることができる能力が必要とされているんでしょうか。
受益者(利益を受ける人)の資格要件とは?
結論から申し上げますと、家族信託では受益者(利益を受ける人)の資格や要件に定めはありません。
信託財産の管理・処分については信託契約書等で定められた受託者(財産を預かる人)が行うことになるため、受益者には判断能力等の特別な要件は必要ないのです。
ただし、受益者には受託者に対して行使できる権利が法律で定められてあり、その権利を行使する際は、受益者に判断能力が必要とされる場合があります。
受益者代理人の活用
上記に記載してある通り、受益者に判断能力が必要とされる場合がありますが、このような場合、重度の障がい者や認知症の方は権利行使はできないのでしょうか。
このような場合に備えて「受益者代理人」という者を選任することができるようになっており、受益者の代わりに受益者の権利を行使することができます。
ただし、受益者代理人は信託契約書等に定めが無ければ選任することができません。
よって、信託を設計するにあたっては、受益者代理人の定めを設けておくことが家族民事信託を安定させるポイントになります。
専門家に相談して様々な事態を想定した上で、安心できる家族信託を組成することをお勧めいたします。