家族民事信託での受益権の複層化ってなに?所有権との比較で解説
ゴールデンウィークも後半に差し掛かってきましたね。
過ごし易い新緑のシーズンをみなさんはいかがお過ごしでしょうか。
さて、先日、家族信託のセミナーの際に受けた質問でこのようなものがありました。
「家族信託の特徴である受益権の複層化(ふくそうか)とはいったいどういうことですか?」
そもそも家族信託自体が近年クローズアップされたものですから、受益権の複層化と言われても馴染みがなく分かりづらいですよね。
そこで今回は「受益権の複層化」について解説します。
信託を利用すると権利の中身を分離することができる
家族民事信託の特徴である受益権の複層化については、所有権から得られる権利と比較するとわかりやすいです。
まず、下記の図をご覧ください。
信託受益権と所有権との比較
所有権の特徴は?
家族民事信託の受益権の複層化を理解するにあたって、まずは所有権について理解すると分かりやすいかもしれません。
所有権の場合、収益を受ける権利と元本を受ける権利を分けることはできません。
これはどういうことかというと、例えば、賃貸建物を所有している人を想像してください。
賃貸建物を賃貸した場合、賃借人から賃料(収益を受ける権利)を受け取ることができますよね。
また、その賃貸建物そのものを売却した場合は、当然のことながら売却代金(元本を受ける権利)を受け取る権利があります。
所有権を持つということはこの収益を受ける権利と元本を受ける権利の両方があるということを意味し、これらの権利をバラバラに分けて処分することはできません。
家族民事信託の特徴は?
では、信託を利用した場合はどうでしょう。
信託を利用すると、収益を受ける権利(収益受益権)と元本を受ける権利(元本受益権)を分けることができます。
これを受益権の複層化といいます。
受益権の複層化の活用事例
では、この受益権を複層化することができればどういう場面で役に立つのでしょうか。
例えば、次のような悩みをお持ちの方も多くいらっしゃると思います。
75歳男性「近頃、体力的に衰えてきたし、判断能力の低下にも不安がある。私が所有している賃貸不動産を息子(45歳)に引き継がせたいと思っているが、妻(72歳)の生活の保証についてもきちんとしてあげたい。 」
このような悩みがある方は、
①賃貸不動産を信託して、元本受益権(賃貸建物)を息子(45歳)さんへ
②収益受益権(家賃)を妻(72歳)へ分けて渡す
ことで願いが叶えられることになります。
前述のとおり、所有権では実現することができない想いを、家族民事信託では実現することが可能です。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
以下、関連記事です。
家族民事信託を実行した際は、不動産の場合は名義が委託した親から、受託した息子に変わります。その時の税金はどうなるのでしょうか?今回の記事では家族民事信託の税金について解説しました。
遺産分割について民法が改正されたことはご存知でしょうか?今回は、今回の民法改正で変更された改正ポイントについて解説しました。
何故、家族民事信託という解決策が生まれたのでしょうか?それは、現代社会の相続の形が昔と変わって来たからですね。資産管理に関連する家族民事信託の必要性について解説した記事はこちら。合わせてご覧ください。